パパの加藤正人(かとう まさと)は郊外に別荘を買って、そこを自分の隠れ家にしていた。普段はその別荘で過ごしている時間の方が長い。ママの加藤光希(かとう みつき)が時々別荘の掃除に行くとき、私もついて行くのが楽しみだった。ビー玉がベッドの下に転がり、拾おうと手を伸ばすと、黒いレースの下着に触れた。それを拾い上げてママに渡した。「ママ、ベッドの下に服が落ちてたよ」ママは汗だくになりながら、それを受け取った。じっと数秒見つめ、顔から微笑みが消え、まつげがかすかに震えた。「ママ、どうしたの?」バケツにはたくさんの衣類が浸かっている。ママは濡れた手で、強く握りしめて、長いことその下着を見ていた。ママは目を赤く腫らし、震える手でそれをゴミ箱に投げ捨てた。「いい子ね。でも、これはママのじゃないのよ、勘違いしちゃったね」ママは微笑んで私の頭をなでたけれど、目尻から涙がこぼれ落ちるのが見えた。その日、ママはご馳走を作り、朝からずっとパパの帰りを待っていた。ただひたすら同じ姿勢のまま、冷めた料理を何度も温め直していた。それでもパパは、いつまで経っても帰ってこない。深夜2時、外からパパの声が聞こえた。これまで聞いたことのない、あまりに優しい声だった。「先に寝てろ。もう家に着いたから、切るよ……」パパはママがリビングにいることに少し驚いたけれど、すぐに、ママの手を取ろうとした。ママが勢いよく手を振り払うと、その瞳にはこれまで見たことのない哀しみが宿っていた。パパは表情を変えず、淡々と言った。「光希、ただいま」ママは表情一つ変えず、パパからコートを受け取って、ワイシャツの襟元を整えた。「正人、服に口紅がついてるわ」パパは目をそらし、咳払いをして言った。「今日会った客が飲みすぎて、誤ってつけたんだ」そう言うと、脇を通り過ぎて奥へ向かった。ママがさっきの下着をパパの目の前へ突き出す。「じゃあ、これもその客が酔っぱらって忘れていったの?」パパの唇が震え、顔面が蒼白になった。長い沈黙の後、パパは不機嫌そうにそれをひったくり、床へ投げ捨てた。「疑心暗鬼になるな。お前のものだろ。自分で買ったものも忘れたのか?狂った真似はやめろ、子供に悪影響だ!」そう言うと、パパは私の額にキスを
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