昔々、ある大陸にリンゼン帝国という国がありました。 かつては隆盛を誇ったその国も、皇帝の交代に伴う内乱で国が傾き、周囲への影響力を失っていきました。 そして世は乱れ、相次ぐ戦火によって経済が止まり、田畑は焼かれ、食料が不足した民草は塗炭の苦しみを味わうことに。 そんな中、農民から身を起こし、リンゼン帝国の男爵という地位まで駆け上がったカイゼル・ハワードという人物が立ち上がったのです。 彼は義勇軍を率いて反旗を翻し、西の海に面した一都市を占領してハワード王国を築きました。 『炎の剣士』と呼ばれたカイゼルの強さは他を圧倒し、瞬く間に帝国の西方三分の一を掌握。 彼の善政によって経済や食糧生産は回復し、民心は安定。 かくして西方の民は安寧を取り戻し、人々は彼を『太陽の剣王』と呼んで讃えることになったのです。 リンゼン帝国にとっては大打撃でしたが、力の衰えた帝国ではハワード王国を攻めることも出来ず、にらみ合いを続けたまま十年の歳月が過ぎていきました。 * * * 城の中庭、カイゼルは剣の稽古をつけてあげていました。 「せいやぁーー!」 裂帛の気合と共に、正面から剣を振り下ろす小さな剣士。「そんな攻撃は当たらないぞ! アウグスト!」 さすがはかつての『炎の剣士』、体を捻るだけで難なくそれをかわします。しかし、アウグストと呼ばれた少年も負けてはいません。「はぁっ!」 振り下ろした剣が地面へつく前に素早く跳ね上げ、そのまま横薙ぎの一閃。「ぬっ」 その攻撃にはカイゼルの体捌きも間に合わず、剣を使って受け止めるしかありません。「やるな! だが甘い!」 受け止めた剣をくるりと回すと、少年の持つ剣をからめとり、そのまま弾き飛ばしてしまいました。 十メートルほど離れた場所に突き刺さった自分の剣を見て、少年は膝をついてしまいます。その顔には無念の色が。 「まいりました……」 意気消沈して
Terakhir Diperbarui : 2026-05-16 Baca selengkapnya