デスクに戻れば、作るべき資料は山のようにある。遥はすぐに分析作業に没頭していった。AIは早い。もちろん遥もAIはフル活用する。けれど、そのAIに指示を出すのも、出た結果を検証するのも、やっぱり人だと思う。 あっという間に時間は過ぎ、昼休みのベルが鳴る。 ベルを合図に少し背伸びをして肩を回すと、遥はスケジュールアプリを開き、午後の予定を確認する。 打ち合わせが2件。片方は社内の定例ミーティングだからいいとして、もう一件は広告代理店との打ち合わせだ。こちらのマーケティングの方針を的確に伝え、認識の齟齬が起きないようにしないといけない。要件確認の最後の会議だから、ここで間違えると、後戻りの被害が甚大だ。 準備はできているが、資料の最終確認ぐらいはしておいた方がいい。 小さく息を吐くと、昼食のために外に出ていくことを諦め、引出しから小さな栄養補助食品を取り出した。「水野さん。それ、お昼ごはんのつもりですか?」 向かいのデスクから見とがめたような男性の声が飛んでくる。 同じ企画アシスタントの後藤だ。一つ期が下だが、とても優秀で次に自分を抜いてくのだとしたら、この後藤だろう、と遥は内心思っている。「そうよ?悪い?」 そっけなく応えると、栄養補助食品の袋をぴり、と破る。 資料なんか多少粗くたって、堂々としている方がいいのよ。 そう言った後輩の子たちの声が耳の中によみがえる。 もしそうなんだとしたら、今から自分がお昼ご飯を犠牲にしてやろうとしていることは、馬鹿すぎるかもしれない。 でも、これが自分の性分だ、しょうがない。 そっと周りを見渡して、ほとんどのメンバーがランチに行ったことを確認すると、資料を開いて、他の資料と突き合わせながらチェックを始めた。 デスクの向こうから、後藤がこちらをじっと見つめていたが、遥は気が付かなかったことにする。 今回のプロジェクトには、後藤は関わっていないのだから。 ✿ 投影資料をギリギリまで調整し、遥はノートPCを抱えると慌てて社外会議室へと走る。「あれ~水野さん。まだ会議室に行っていなかったんですかぁ?鈴木さん、とっくの昔に行来てますよぉ」 朝、柱の陰で、これからの時代は分析はAIが、とうそぶいていた後輩、小田だ。 よぉ、に、侮りの色をまた微妙ににじませる。 陰口だけでなく、こうやって堂々と面
Terakhir Diperbarui : 2026-08-13 Baca selengkapnya