地面には、翔太に踏み潰されてべちゃべちゃになった焼き芋が張り付いていた。これで500円の稼ぎになるはずだった。もったいないことだ。俺はしゃがみ込み、地面の潰れた焼き芋を少しずつ剥がし取り、そばの生ゴミ用のバケツに放り込んだ。「ねえ、見た?あいつが桐生社長の元カレ?」「人を轢き殺してニュースにもなったんでしょ。懲役5年だったらしいわよ!」「うそ、人殺し?そんな奴がどうして幼稚園の前で屋台なんて出してるの?危険すぎるんじゃない!」「離れましょ。頭がおかしくなってて、逆恨みして何されるか分かったもんじゃないわ……」子どもを迎えに来た保護者たちはまだ帰りきっておらず、時折こちらをじろじろと見ながらヒソヒソと囁き合っていた。俺は淡々と焼き芋を焼き続けた。まるで噂されているのが自分ではないかのように。5年前、俺は鳴海音楽大学で最も輝いていた天才ピアニストであり、桐生グループの社長である千雪の婚約者だった。あの頃の千雪は、俺が何気なく口にした「雪が見たいな」という一言のために、夜のうちに車を飛ばして北国へと連れて行ってくれるような人だった。ずっとこの幸せが続くのだと思っていた。蒼汰が現れるまでは。蒼汰は、俺がまるまる4年間も資金援助していた苦学生だった。卒業後、俺は彼を千雪の会社へ入社させてもらった。だが思いもしなかった。彼が俺の目を盗んで、裏で千雪と深い関係になっていたなんて。あろうことか俺が服役している間に、千雪と結婚し、子どもまで儲けていたのだ。人影がまばらになった後、俺は屋台を押してその場を離れた。半地下にある住処に戻り、力を振り絞って階段の入り口にリヤカーを施錠した。振り返ると、ドアの前に一人の女が立っているのが見えた。廊下のセンサーライトはとうの昔に壊れていたが、それでもそれが橘凛(たちばな りん)だとすぐに分かった。彼女は、俺が刑務所で知り合った友人の実の妹で、俺の隣人だった。凛の手にはビニール袋が握られており、中には軟膏がいくつか入っていた。ドアの隙間から漏れるわずかな明かりを頼りに、彼女は俺の赤く腫れ上がり、水ぶくれになった手の甲を見とがめた。先ほど慌てて顔を隠そうとした際に負った火傷の赤い痕が、古い傷だらけの手の上で異様に目立っていた。彼女の眉間には一瞬で深いシワが寄り
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