牧生は私の飴を受け取らなかった。「由実、いつまでこんな芝居を続けるつもりだ?」彼の声は大きかった。私はびくっと首をすくめ、本能的に手にしていたぼろぼろの碗を胸元へ抱き寄せた。碗の中には少しお金が入っている。今日の夕飯代だ。取られちゃいけない。私が何も言わないのを見て、牧生はますます苛立った。彼はいきなり私の腕をつかんだ。「痛い!おじさん、悪い人!由実を叩かないで!」痛くて大声で泣き出したけれど、もう片方の手ではあの飴をぎゅっと握りしめていた。これは今朝、陸野靖彦(りくの やすひこ)がご褒美にくれたものだ。昨日、おもらししなかったから。「おじさん」という言葉を聞いた途端、牧生の顔がさらに険しくなった。「狂ったふりまでしやがって!」彼は鼻で笑い、私が固く握りしめた拳へ視線を落とした。きっと私が何か高価なものを隠していると思ったのだろう。彼は無理やり私の指を1本ずつこじ開けた。手のひらにあったのは、少し溶けてほこりまみれになったフルーツキャンディだった。牧生は一瞬呆気に取られた。そして次の瞬間、その目に強烈な嫌悪が浮かんだ。「お前、こんなもののために?」彼は飴をひったくると、地面に叩きつけた。ピカピカに磨かれた革靴で踏みつけ、何度もぐりぐりと潰す。「いや!」私は悲鳴を上げた。それは、私の飴なのに。どこからそんな力が出たのか、自分でも分からなかった。私は彼の手を振りほどくと、ドサッと地面に這いつくばった。そして、タイルの隙間に入り込んだ飴の欠片を必死に指でかき集めた。汚い。でも、甘い。泥と靴跡まみれになった飴の欠片を、私はそのまま口に詰め込んだ。涙も鼻水も顔中にべったりとついていた。「甘い……甘いよ……」周りの人たちはみんな私を見ていた。中にはスマホを取り出して撮影している人までいる。まるで私の姿に腹を立てたかのように、牧生は突然私の襟首をつかんだ。子猫でもつまみ上げるように、私の体を軽々と持ち上げる。「由実!お前、気持ち悪くないのか!」私は彼を無視した。ただ泣きながら、地面に残った飴の跡を見つめた。「弁償して……おじさん、由実の飴、弁償して……」牧生は歯を食いしばると、そのまま私を肩に担ぎ上げ、道端に停まってい
Baca selengkapnya