Todos os capítulos de 『追放された聖女と呪われた竜王の契約結婚』: Capítulo 1 - Capítulo 8

8 Capítulos

第1話 「君はもう必要ない」

第1話 「君はもう必要ない」「ミオ・アイザワ。今日この場をもって、君との婚約を破棄する。それと同時に、王国聖女としての任も解く。君には明朝までに王宮を去ってもらう」王太子アドリアンがそう告げたとき、ミオは最初、その言葉が自分に向けられたものだとは思えなかった。王宮の大広間には百人を超える貴族が集められており、天井から吊るされた幾つもの魔石灯が昼間のような明るさを作り出している。いつもなら楽団が優雅な曲を奏で、色鮮やかなドレスに身を包んだ令嬢たちが笑い声を交わしているはずなのに、今夜ばかりは奇妙なほど静かだった。誰もが知っていたのだろう。知らされていなかったのは、婚約を破棄される当人であるミオだけだったらしい。「……申し訳ありません、殿下。少し、聞き取れなかったようです。今日は北部から届いた避難民名簿の確認を朝までしていたもので、寝不足なのかもしれません。もう一度、おっしゃっていただけますか」自分でも情けないことを言っていると思った。けれど、そうでも言わなければ立っていられなかった。三年間、この世界で覚えた礼儀作法どおりに背筋を伸ばし、両手を腹の前で重ねたまま、ミオは壇上に立つアドリアンを見上げた。彼は美しい男だった。柔らかな金色の髪に青い瞳、整った鼻筋、王族らしい華やかさを持ちながら、騎士として鍛えているため体格もよい。ミオが三年前、このエルディア王国へ召喚されたとき、突然知らない世界へ放り出され、言葉すらまともに理解できずに泣いていた彼女へ最初に手を差し伸べてくれたのもアドリアンだった。『大丈夫だ。君はこの国が守る』あのときは、その言葉だけでどれほど救われただろう。だからこそ、今の彼が何を言っているのか、耳が理解することを拒んでいた。アドリアンはわずかに眉を寄せた。「ならば、もう一度言おう。君との婚約は破棄する。そして聖女としての地位も返上してもらう。今後、君が王家の名を用いて活動することも認めない」今度は聞き間違えようがなかった。大広間のどこかで、小さく息を呑む音がした。驚いたのではない。誰かがようやく始まったと期待したような、そんな音だった。ミオは唇を結び、何度か息を整えてから尋ねた。「理由を、お聞きしてもよろしいでしょうか。婚約については殿下のお気持ちもありますから、私だけでどうこう言えるものではありません。です
last updateÚltima atualização : 2026-08-18
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第2話 追放された夜、小さな竜にスープを作りました

第2話 追放された夜、小さな竜にスープを作りました雪の中で拾った黒い子竜を外套の内側へ入れてから、ミオは自分がとんでもなく馬鹿なことをしているのではないかと、岩陰へ向かって歩きながら何度も考えた。北方荒野には人を襲う魔物がいると、王宮にいた頃から散々聞かされている。しかも今のミオは、魔物を一撃で退けられる剣も魔法も持っておらず、食料だって決して豊富ではない。その貴重な食料を、正体も分からない竜らしき生き物へ与えようとしているのだから、マリアがこの場にいたなら両肩を掴まれて揺さぶられながら、「さっき約束したばかりでしょう」と叱られていただろう。「分かってます、分かってますよ。困っているものを何でも拾っていたら、私のほうが先に死ぬんですよね。でも、さすがにこの状態で置いていくのは寝覚めが悪いじゃないですか。だから一晩だけ、一晩だけです。明日の朝になって元気になったら、あなたはあなたの群れに戻る。私は町へ向かう。それでおしまいですからね」外套の中へ向かって言い聞かせると、小さな黒竜は理解しているのかいないのか、ミオの胸元へさらに深く顔を埋めた。「……そうやって聞こえないふりをするの、ずるくありません?」返事はない。代わりに、小さな鼻先から温かい息が漏れた。先ほど抱き上げたときより呼吸が落ち着いている気がして、それだけでミオは少し安心した。岩場の奥には、幸いにも人ひとりが寝られる程度の窪みがあった。洞窟と呼ぶには浅すぎるが、吹きつける雪を直接受けずに済むだけありがたい。ミオは荷物を下ろし、王国から支給された簡易テント用の布を岩壁へ固定すると、風の侵入を少しでも防げるよう工夫した。王宮にいた頃、北部へ救援物資を運んだ経験が役に立った。もっとも、当時は騎士や兵士が何十人も一緒だったため、自分が雪原で野宿することになるとは考えてもみなかったが。「人生って、本当に何が役に立つか分からないものですね。まさか王太子妃教育より、避難民用テントの設営方法のほうが先
last updateÚltima atualização : 2026-08-26
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第3話 竜王様、求婚が雑すぎます

第3話 竜王様、求婚が雑すぎます「その後、朝食を食べる。そして改めて、君へ結婚を申し込む」「話を聞いてました!?」雪に閉ざされた岩陰へ響いた自分の声が、思った以上に大きかったらしく、天井近くに積もっていた細かな雪がぱらぱらと落ちてきた。ミオは慌てて頭を押さえたが、目の前にいる男――昨日まで自分の腕の中で「キュゥ」と鳴いていた黒い子竜であり、人間からは血塗れの竜王と恐れられているカエル・ヴァルドレイクは、そんなことなど気にも留めず、どうして自分が叱られているのか分からないという顔をしている。その顔がまた、腹立たしいほど整っていた。人間の姿になれば二十代後半ほどに見えるものの、実際には二百年以上を生きているらしく、長い黒髪は夜そのものを糸にしたような艶を持ち、黄金の瞳は感情を読み取りにくいほど鮮烈だった。肩から胸元へ続く身体には無駄な肉がなく、細身に見えて鍛え抜かれていることが一目で分かるのだが、現在その身体を隠しているものは、ミオが慌てて押しつけた毛布一枚だけである。どうして自分は、婚約破棄された翌朝から裸の竜王と結婚について話し合っているのだろう。昨日までの人生を振り返っても、どこで道を間違えればこうなるのか分からない。「とにかく、結婚については今すぐ忘れてください。私は昨日婚約破棄されたばかりですし、あなたとは名前を知ってからまだ十分も経っていませんし、それ以前に、あなたのことは昨日まで手のひらサイズの竜だと思っていたんです。そんな相手から朝起きてすぐ求婚されて、『はい、喜んで』と答える女がいたら、むしろそちらのほうが心配になります」「しかし昨夜、君は私を抱いて眠った」「その言い方をやめてください!」「事実だろう」「事実だから余計に駄目なんです! あなたは子竜の姿だったでしょう。あれを男女の意味で抱いたことにされたら、私は一生立ち直れません」カエルは首を傾げた。昨夜、小さな竜の姿で同じように首を傾げていたのを思い出して
last updateÚltima atualização : 2026-08-27
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第4話 一年間だけの妻なら、寝室は絶対に別です

第4話 一年間だけの妻なら、寝室は絶対に別です白銀の髪を持つ青年が腹を抱えて笑い続ける一方で、ミオの腕に収まっている小さな黒竜は本気で機嫌を損ねたらしく、鼻先から何度も火花を散らしていた。「いやあ、本当に申し訳ありません、陛下。笑ってはいけないとは分かっているんですが、三日前に城を出るときは『私が戻るまで評議会を動かすな』なんて、ものすごく怖い顔をしていた方が、人間の女性の腕の中で毛布に包まれているんですよ。これを見て平静でいられるほど、俺は長生きしていませんって」「グルルルルル……」「分かりました、分かりました。もう笑いませんから、その火をこちらへ向けるのだけはやめてください。今月二度目なんですよ、前髪を燃やされるの」青年はそう言いながらも口元を押さえており、どう見ても反省している様子はない。ミオは腕の中のカエルと青年を交互に見比べてから、恐る恐る尋ねた。「あの……お知り合いなんですよね?」「もちろんです。むしろ知らない男が陛下にこんな口を利いていたら、今頃ここに首が転がっていると思いますよ」「朝から怖い説明をしないでください」「これは失礼しました。人間の女性に自己紹介するときは、もう少し柔らかく言わないといけませんね。俺はレグル・ファーン。北方狼騎士団の団長をしています。そこの気難しい黒竜――失礼、我らが尊き竜王カエル・ヴァルドレイク陛下の部下です」青年――レグルは胸に手を当て、芝居がかった礼をした。銀色の狼耳までぴんと立てているので、礼儀正しいのかふざけているのか判断しにくい。「ミオです。相沢美緒。この世界ではミオと呼ばれています」「ミオ殿。なるほど、あなたが」レグルが意味ありげに目を細めた。「……何ですか、その『なるほど』は」「いえ。俺たちは昨夜から陛下を探し
last updateÚltima atualização : 2026-08-28
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第5話 人間嫌いの魔物たちに歓迎されませんでした

第5話 人間嫌いの魔物たちに歓迎されませんでした「陛下! 三日も行方不明になったと思ったら、何で人間の女を連れて帰ってきて、しかも結婚までしてるんですか! 説明する順番というものがあるでしょう!」北門を抜けるより先に響き渡った紫髪の女性の怒声に、ミオは思わず肩をすくめたが、怒鳴られている当人であるカエルは少しも動じず、むしろ面倒そうに目を細めただけだった。「結婚はまだしていない」「そこを訂正している場合ですか! 私が問題にしているのは、陛下が三日間も連絡を絶ったうえ、戻ってきた途端に国境門のど真ん中で『この女は私の婚姻契約者だ』なんて宣言したことです。おかげで伝令鳥が王都へ飛ぶより先に、街の噂好きのおばさんたちが商業魔信で話を広めていますよ。たぶん今頃、城では『陛下が人間の美女に一目惚れして攫ってきた』とか、『二百年守り続けた純潔をとうとう捨てるらしい』とか、私が聞きたくもない話まで増殖してますからね!」「後半は誰が言った」「そこ気になります!?」ミオは思わずカエルの横顔を見た。彼は本当に後半の情報源だけが気になっているらしい。そのあまりにも真剣な表情がおかしくて、こんな状況でなければ笑っていたかもしれないが、今はそれどころではなかった。城壁の上にも、開かれた門の向こうにも、たくさんの視線がある。獣の耳を持つ者、額から角を生やした者、翼を持つ者、肌が青い者、ミオより頭二つ分以上も大きな巨躯の者。人間の王都では一度も見たことのない種族ばかりが、突然現れた「人間の女」を遠巻きに見つめている。好奇心だけならよかった。けれど、明らかな敵意も混じっていた。「人間だってよ」「本当に陛下の妻になるのか?」「ふざけるな。人間に何人殺されたと思っている」「聖女だって聞いたぞ。また神殿の手先じゃないのか」小さな囁きだからこそ、よく聞こえた。
last updateÚltima atualização : 2026-08-29
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第6話 竜王様が二百年ぶりに「おいしい」と言いました

第6話 竜王様が二百年ぶりに「おいしい」と言いました「……あの、ミオ様。夕食のお着替えをお持ちした侍女なのですが」扉の向こうから遠慮がちな声が聞こえた瞬間、ミオはベッドの上で完全に固まった。つい先ほどまで、カエルが自分がまだ部屋にいるか確かめるため何度も扉を叩きに来ていたせいで、三度目も彼だと思い込んで、「一年契約の初日に逃げたりしませんからね」と大声で返してしまったのだ。よりによって、これから世話になる城の侍女へ。ミオは両手で顔を覆い、しばらくそのまま動けなかった。「……今の、忘れていただくことは可能でしょうか」「努力はいたします」即答ではなかった。それが余計につらい。「その返事だと絶対に覚えていますよね」「申し訳ございません。少しだけ面白かったもので」「正直ですね……。どうぞ、お入りください」返事をすると、扉が静かに開いた。入ってきたのは、ミオと同じか少し年下に見える女性だった。淡い灰色の髪を肩の辺りで切り揃え、頭の上には猫に似た三角形の耳がある。腰の後ろには同じ色の長い尻尾があり、白と黒を基調とした侍女服の裾からゆっくり左右へ揺れていた。両腕には大きな箱を抱えている。「失礼いたします。侍女のリュナと申します。本日から、ひとまずミオ様のお世話を担当するよう侍従長より申しつかりました」「ひとまず、ということは、まだ正式ではないんですか?」「その……」リュナの耳が少しだけ伏せた。いかにも言いにくそうな反応だった。ミオはすぐに察した。「人間の世話をしたくない方もいるんですね」リュナの顔が強張った。
last updateÚltima atualização : 2026-08-30
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第7話 私を守るためなら、竜王様は世界を敵に回す

第7話 私を守るためなら、竜王様は世界を敵に回す「侵入者だ! 北塔で魔法陣が発見された! 陛下をお守りしろ!」廊下の向こうから怒号と足音が重なって聞こえ、つい先ほどまで静かだった王城が一瞬で別の場所へ変わったようだった。眠りから叩き起こされたミオは寝間着の上から急いで上着を羽織ったものの、頭の半分はまだ状況を理解できていなかった。けれど、長椅子のそばで胸を押さえているカエルの姿を見れば、夢ではないことだけは嫌でも分かる。彼の首筋には、黒い蔦のような紋様が浮かんでいた。昼間にザラが確認したときは、二百年にわたって彼を蝕み続けていた呪いが明らかに薄くなっていたはずなのに、今は逆に、何かが内側から無理やり皮膚を突き破ろうとしているように濃く脈打っている。「カエル、手を離してください。ザラを呼ばないと、本当にまずいでしょう」「呼ぶ必要はない。あいつなら今頃、魔法陣の場所へ向かっている」「でも、あなたの呪いが急に悪化したんですよ。ここに一人で置いていくわけには――」「一人ではない」カエルが低い声で言った。「君がいる」「だからこそ困ってるんです。私は呪いを治す専門家じゃありませんし、何か起きても戦えません。せめて治療のできる人を呼ばせてください」ミオが再び扉へ向かおうとすると、カエルは手首を掴んだまま離さなかった。強い力ではない。逃げようと思えば振りほどける程度だった。けれどその手は、先ほどからわずかに震えている。「……カエル」「外へ出るな」「どうしてですか」「北塔の魔法陣が、私の呪いを刺激するためだけのものとは限らない」「つまり?」カエルが答えるより先に、扉が激しく叩かれた。
last updateÚltima atualização : 2026-08-31
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第8話 竜王様、それはたぶん嫉妬です

第8話 竜王様、それはたぶん嫉妬です朝、ミオが目を覚ましたとき、最初に目へ入ったのは見知らぬ天井ではなく、自分の腕へしっかりと巻きついている黒い尻尾だった。「……やっぱり離してくれなかったんですね」まだ眠気の残る声で呟きながら横を向くと、昨夜の約束どおり、小さな黒竜の姿をしたカエルが寝台の端で丸くなっていた。普段なら近づけばすぐ気配を察して黄金の瞳を開く男なのに、今朝はミオが身体を動かしても起きる様子がなく、規則正しい寝息だけを立てている。二百年間、まともに眠れなかった。そう聞いてから、この寝顔を見る意味が変わってしまった。昨日までなら、ずいぶん警戒心のない竜王だと思って笑えただろう。しかし、一人では眠れず、眠ったとしても悪夢によって何度も起こされてきた男が、こうして自分の隣では朝まで眠れているのだと思うと、起こすことさえ悪いことをしている気分になる。「世界最強の竜王が、こんな無防備でいいんでしょうかね」そっと頭へ触れる。硬い鱗。二本の小さな角。昨日まで何度も撫でているので、もう触れることへの抵抗はほとんどなかった。むしろ撫でると、カエルは眠ったまま頭を少しだけミオの指へ押しつけてきた。「……犬じゃないって怒るくせに、こういうところは犬っぽいんですよね」すると。「誰が犬だ」低い声がした。「起きてたんですか!」ミオは慌てて手を引いた。カエルが片目だけ開けている。「今起きた」「でしたら聞かなかったことにしてください」「犬と言った」「聞いてるじゃないですか」「竜だ」「知っています」「最上位
last updateÚltima atualização : 2026-09-01
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