Todos los capítulos de 学部一の美女に「たかり女」疑惑をバラされた?: Capítulo 1 - Capítulo 10

10 Capítulos

第1話

九条蒼真は、私の実の叔父だ。このことを、学校の誰も知らない。別に、わざと隠していたわけじゃない。入学初日、蒼真に図書館の前で呼び止められて、無表情のままルールを言い渡された。「学校では叔父さんと呼ぶな。親戚だってことも、誰にも言うな」「なんで?」「俺、まだ大学3年だぞ。叔父さん呼ばわりされたら、何に見える」「年上の親戚」「お前のおばあちゃんに言っとけ。20年早く産んでくれって」言うだけ言って、蒼真はさっさと背を向けて歩き出した。私は慌てて呼び止めた。「じゃあご飯代なくなったらどうするの?」振り返りもせず、銀行のカードが一枚飛んできた。「LINEしろ。使い切ったら言え」それ以来、学校では赤の他人として振る舞った。蒼真は金融学科のトップで、成績も優秀、しかも顔もいい。学内一のイケメンとして通っていた。一方の私は新聞学科の1年で、全く存在感のない、その他大勢のうちの一人だった。だから私たちを結びつけて考える人間なんて、誰一人いなかった。学部一の美女、桜小路美月(さくらこうじ みづき)が蒼真に惚れるまでは。美月は、どこからか私と蒼真のLINEのやり取りを掘り当てていた。おそらく、コンテストの期間中にスマホを預けていた隙を突いて、誰かに中を見せてもらったんだろう。蒼真が毎月私に送金していること。私が数日おきにマンションへ出入りしていること。彼のカードでスーパーの牛乳を3箱まとめ買いしたことまで、しっかり握っていた。だが、私たちの本当の関係までは知らない。知ろうともしていない。1年の女子が学内一のイケメンのマンションに何度も出入りして、しかも金まで使っている。それだけで、美月にとっては十分すぎる証拠だった。認定式は、強制的に中止になった。私はそのまま学校側に呼び出され、職員室送りになった。隣の担当教員の田村恵子(たむら けいこ)は、チョークの粉を丸ごと一箱飲み込んだような顔をしていた。「桜井さん。このやり取りについて説明してもらえますか」「家族との、普通の会話です」私がそう答えると、恵子は眉をひそめた。「家族?九条くんの家族情報に、あなたの名前はありませんけど」「彼は、私の……」「彼氏だとでも言うつもりですか?」いつの間にか職員室に入り込んでい
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第2話

翌朝早く、寮の私の部屋のドアにA4紙が貼られていた。【自覚を持って九条先輩から離れてください。これ以上新聞学科の恥を晒さないで】差出人は【新聞学科女子一同】。私はその紙を剥がして、裏返した。裏は白紙だった。ちょうどいい、メモ用紙にしよう。午前の授業、私は階段教室の一番後ろの列に座った。前にいたクラスメートたちが、申し合わせたように3列前に移動した。まるで私から放射線でも出ているみたいに。美月の取り巻き、小森茉莉(こもり まり)がわざわざ私の隣まで回り込んできて、机の上にミルクティーを置いた。「美月先輩がミルクティー、ご馳走するって」「いらない」「それに――」茉莉は声を潜めた。「今日中に掲示板に謝罪文を上げれば、炎上を鎮めるのに協力してくれるって」「何を謝れって?」「九条先輩に対するあなたの行いが、不適切だったって認めること」「普通の身内付き合いのどこが不適切なの?」茉莉はため息をついた。「あのやり取り、もう全校学生に晒されてるんだよ?今さら何を言っても、誰も信じないよ。素直に頭を下げたほうがいいって」私はミルクティーを押し返した。「頭を下げるのはいいよ。その前に、私の十傑の座を返してから言って」茉莉はミルクティーを持って去っていった。昼、食堂に行くと、学生証をかざした端末に残高不足の表示が出た。蒼真の銀行カードは、美月に「証拠」として学生自治会に提出されてしまっている。自分名義の口座には、あと940円しか残っていない。今月はまだ19日ある。一日あたり平均50円。私は茶碗に盛った白米だけを持って、隅の席に座った。ルームメイトの早坂夕奈(はやさか ゆうな)が、自分のおかずを半分こっちに押し出してきた。生活費を使い果たしておかずが買えないんだと思っているらしい。もっとも、事実その通りだった。「私の食べていいよ」「いい、ダイエット中だから」「45キロしかないのに、何を痩せるの?」「風に吹き飛ばされるくらい痩せれば、この学校とはもう無関係でいられるじゃない」午後、学生自治会室にカードを取り返しに行くと、美月は書類を整理しているところだった。美月は顔を上げて私を見たが、表情ひとつ変えなかった。「カードは、今は渡せない」
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第3話

3日目は金曜日だった。学校では毎週金曜の昼、広場で『学生の声』という催しが開かれる。誰でも壇上に立って発言できるイベントだ。私はこの機会を借りて、真相をはっきりさせるつもりでいた。ところが朝、教室に着くと、席に一通の封筒が置かれていた。学部の公印が押された、正式な通知書だった。【桜井望さんの今学期表彰資格取り消しに関する通知】【理由:重大な品行上の疑義があり、学生自治会からの申し立てにより、一切の表彰資格を停止する】発行日は昨日付だった。美月の仕事の速さは、出前よりも速いようだ。申し立てから処分まで、24時間もかかっていない。私は通知書を持って担当教員の恵子のところへ向かった。恵子は朝ごはんを食べている最中だった。「桜井さん、今回の件ですが……注目を集めすぎているようですね。学校側としましても、これ以上世論の的になるのを抑えるためなんです。九条くんが戻って詳細がはっきりすれば、表彰資格の回復に向けて検討の余地もあります……まずは、事態が沈静化するのを待ちましょう」「彼が戻るのは明日なのに、私は今日という日のうちに処分されているんです」「手続き上は問題ありません」「手続き上?それならお聞きしますが、学生自治会に個人の銀行カードを差し押さえる権限があるんですか?」「それは……まず学生自治会と話し合ってください」世論の前では、「手続き」なんて声の大きい者にとっての都合のいい形に、粘土のように形を変えられるものだ。昼休みになり、私は広場に向かい発言の申し込みに行った。だが美月が先回りして、「学生の声」の申込用紙に細工をしており、私の名前は線が引かれて消されていた。それだけではなく、私の名前の横にはこう書き添えてあった。【当該学生は現在品行上の疑義があり、公の場での発言は不適切】私は広場の端に立って、壇上で演説する美月を見ていた。「私たちは、不当な付きまといには勇気を持ってノーと言うべきです。誰にでも、不当な嫌がらせを拒否する権利があります」客席から盛大な拍手が起こった。誰かがこちらに目をやり、ひそひそと囁き合った。美月が私に気づいた。マイクに向かって、微かに笑ってみせる。「もちろん、過ちを犯した学生にも、改める機会は与えるべきだと思います。誰かさん
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第4話

土曜日の午後2時。金融学科コンテストチームの送迎バスが、学校に到着した。知らせは学内ネットより速く校内に広がり、10分後には、広場に200人以上が集まっていた。美月は白いワンピースを着て、花束を抱えたまま群集の一番前に立っていた。背後には、学生自治会が用意した横断幕が掲げられている。【金融学科コンテストチームの凱旋を、心より歓迎いたします!】見た目だけは完璧に整っていた。私は広場の外側の階段に立っていた。誰かが私を撮っている。スマホを掲げてライブ配信している人もいた。コメントには、大方【たかり女が来たぞ】とでも書かれている。蒼真は3番目にバスを降りてきた。リュックを肩にかけ、チームウェアの袖を肘までまくっている。美月がすぐさま駆け寄った。「九条先輩、受賞おめでとうございます!」美月は花を差し出しながら、当然のように蒼真の隣に並んだ。「この数日、九条先輩がいない間に、学校でちょっとした騒ぎがあったんです。でも、もう全部片づけておきましたから」美月はスマホを取り出すと、掲示板の投稿を蒼真に見せた。「1年生の後輩が、ずっと九条先輩の銀行カードを使ってたんです。しかも、九条先輩と特別な関係だってあちこちで言い触らして。チャットでのやり取りも、全部流出してます」美月は画面をスクロールした。「見てください、10万円振り込ませて、マンションに泊まりに行くとまで言って、九条先輩を社会的に葬ろうとしてたんですよ。九条先輩の銀行カードは回収しておきましたし、学部にも彼女の表彰資格を取り消してもらいました。安心してください。もう二度と、九条先輩に付きまとったりできないようにしましたから」美月は大きく息を吸い、顔を上げた。その目はいかにも真剣そうだった。「九条先輩、ちょうどいい機会ですから、今日はっきりさせておきましょう。誤解されて、九条先輩の名誉に傷がつくといけませんから」広場が一瞬、静まり返った。全員の視線が蒼真に集まった。蒼真は顔を上げ、美月の向こうを見据えるように、人垣の外側へまっすぐ視線を投げ、私を見た。200人以上を隔てて、私は蒼真と目が合った。普段は波風の一切立たないような蒼真の表情が、困惑へと変わっていく。それから視線が下がり、私の手の甲に残っ
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第5話

広場は3秒ほど、静まり返った。その直後、蜂の巣をつついたような騒ぎになった。「姪っ子???」「待って、九条先輩ってまだ3年でしょ、姪が1年生っておかしくない?」「お母さんがすごく年上ってこと?いや、それなら姉さんの娘のはず……」美月の顔にはまだ笑みが張り付いていたが、目は完全に固まっていた。美月は口を開きかけた。「九条先輩……今、何て……?」蒼真はそれ以上美月を見なかった。ポケットからスマホを取り出す。コンテストが終わってようやく返却されたばかりで、まだ電源を入れていなかった。蒼真は電源ボタンを押し、十数秒待った。画面が点灯した瞬間、通知が怒涛のように流れ込んできた。一番上に表示されていたのは、私が送ったメッセージだった。【叔父さん大変、あんたに惚れてる子が私たちのやり取りを十傑認定式でのスクリーンに晒した】蒼真はさらに画面をスクロールした。2件目は、私の母からだった。【蒼真、望が学校で何かあったって言ってるの。ちょっと見てあげて。私たちは海外にいて、すぐには戻れないから】3件目は、おばあちゃんが近所の人に頼んで送らせたボイスメッセージだった。蒼真はそれを開かなかったが、自動文字起こしボタンを押しただけで込められた殺気が伝わってきた。【蒼ちゃん、電話に出なさい!あんたの姪っ子がいじめられてるのに、あんたは一体どこにいるの!】蒼真はスマホの画面を美月のほうへ向けた。「よく見てくれるか?このメッセージは俺の姉、望の母親からのものだ。このメッセージは俺の母親、望の祖母からのものだ」美月の顔は、赤から白へ、そして青ざめていった。美月は一歩後ずさった。「わ、私、あなたたちが家族だなんて知らなくて……」「知らなかった?」蒼真の声はさほど大きくなかったが、広場にいた200人以上の耳に、はっきりと届いた。「知らない、と?……なら、どうして俺のスマホを漁り、チャット履歴をスクショまでしたんだ?挙句の果てに、姪の生活費まで差し押さえるなんて……それが『知らない人間』にできることか?」美月の涙が、とうとうこぼれ落ちた。「私はあなたを守るために……」「俺を守る?」蒼真は視線を落とし、私の手の甲の赤い跡を見た。「彼女の手のこの跡は誰がつけたんだ?」美
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第6話

誠は私たちを、本部棟の会議室へ連れて行った。その場にいたのは、誠と、私の担当教員である恵子、金融学科の担当教員、そして美月だった。蒼真は私の隣に座った。美月は向かいに座り、目を真っ赤に腫らして、ティッシュを握りしめてくしゃくしゃにしていた。先に口を開いたのは誠だった。「桜井さん、あなたと九条くんの親族関係を、証明できるものはありますか?」蒼真はその場でスマホを取り出し、自分の戸籍情報のページを開いた。【姉:九条舞】続けて、私の戸籍情報も映し出した。【母:九条舞】九条舞(くじょう まい)――同一人物。蒼真はさらに、去年の正月に撮った家族写真を出してきた。中央におばあちゃん、その左に母と父、右に蒼真が写っている。前列にしゃがんだ私が、猫を抱えている。写真を見終えた誠は、数秒黙り込んだ。それから、恵子に目を向けた。「田村先生、桜井さんの表彰資格を取り消したあの文書、署名したのはあなたですか?」恵子は気まずそうな表情を浮かべた。「あのときは世論の圧力が大きすぎて、学部としてもまず抑えなければと……」「教授会は開きましたか?」「まだです」「教授会も開かずに文書を出した。この手続き、誰が承認したんですか?」恵子は何も言わなかった。主任は今度は美月に目を向けた。「九条くんの銀行カードは、今どこに?」美月はバッグからそのカードを取り出し、机の上に置いた。「あのときは、九条先輩の財産の安全が心配で……」「学生自治会に、他人の財産を差し押さえる権限がありますか?」「ありません」「チャット履歴のスクリーンショットを広めたのは、あなたですか?」美月は唇を噛み、長い沈黙のあとにようやく一言絞り出した。「スクショは私が撮ったんじゃありません。人からもらったんです」「誰にもらったんですか?」「コンテストチームの引率担当と知り合いの子がいて、その子が九条先輩のスマホを見てくれたんです」会議室が一瞬、静まり返った。コンテスト期間中に、出場選手のスマホを無断で覗き見て、チャット履歴のスクリーンショットを第三者に渡したなんて……主任はノートに、ペンで強く線を引いた。「この件は、もう話の次元が変わりましたね、桜小路さん。プライバシー侵害、情報の捏造、財物の
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第7話

食事をしていると、蒼真の電話が鳴った。おばあちゃんからだった。「母さん」と言いかけたところで、電話の向こうが爆発した。向かいに座っていた私にも、テーブル越しにおばあちゃんの声が聞こえてきた。「あんた、どういうつもり!?姪っ子が3日もいじめられてたのに、放っておいたのね!」「母さん、俺はコンテスト中はスマホを提出してて……」「スマホだけじゃなくて足まで提出したの?走って帰ってくることもできなかったわけ?」「あれは缶詰め状態のコンテストで……」「何が缶詰めよ!明日、あんた家に帰ってきなさい!」電話は切れた。蒼真はスマホを置くと、無表情のまま豚の角煮を箸でつまんだ。私はおそるおそる尋ねた。「おばあちゃん、めっちゃ怒ってる?」「まあまあかな」「じゃあ、明日本当に帰るの?」「帰らない。帰ったら殴られる」蒼真はまた一切れ肉をつまんで、私の茶碗に入れた。「それより、お前のルームメイトの夕奈、この数日世話になったのか?」「うん、何回もおかず分けてくれた」「よし、今度何か奢ってやれ。好きなもの頼んでいいから、俺が出す」「お年玉、4000円しかないんじゃなかったの?」「給料がある」蒼真は3年生になってから、投資銀行でインターンをしている。月給は決して低くない。おばあちゃんにもらったお年玉を使わないのは、単に記念にとっておきたいだけだった。もっとも、4000円分の記念というのも、正直たかが知れているけれど。食事を終えて寮に戻る道すがら、学内掲示板を開いた。急上昇ランキングの1位は、もう入れ替わっていた。【九条蒼真、公衆の面前で桜井望が実の姪だと認める。たかり女疑惑、まさかの大逆転!】開いてみると、最も支持を集めているコメントはこう変わっていた。【つまり生活費をねだっていたのは実の叔父さんにってことで、マンションに行ってたのも叔父さんの家でご飯をご馳走してもらいに行ってただけってこと?私たち、彼女に濡れ衣着せてなかった……?】2件目――【桜小路が人のスマホを盗み見てチャット履歴をスクショしてたって、こっちこそ本当に処分されるべきでは?】3件目――【正直、親戚じゃなかったとしても、学生自治会に人の銀行カードを差し押さえる権限なんてないよね?桜小路って、権力使
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第8話

月曜の朝、学校の調査委員会が正式に美月への聞き取りを行った。その話は、夕奈が学生自治会内部から聞き出してきたものだった。調査委員会は3人:学生課の主任、監査部門の教員一人、そして金融学科の担当教員。聞き取りの内容は公表されなかった。だが、その日の午後には、学校の公式サイトに一つの通知が掲載された。長くない文面だった。【桜小路美月さんの規則違反行為に関する処分通知調査の結果、以下の事実が確認された。一、桜小路美月は、九条蒼真がコンテスト期間中に学部へ預けていたスマートフォン内の個人的なチャット履歴を、第三者を通じて不正に入手し、スクリーンショットを取った上で公然と拡散した。二、桜小路美月は、学生自治会役員の立場を利用して、九条蒼真名義の銀行カードを無断で差し押さえ、その差し押さえ期間中に本人以外による利用が2件確認された。三、桜小路美月は、学部に対し虚偽の申立資料を提出し、その結果、桜井望の表彰資格が不当に取り消された。以上を踏まえ、桜小路美月に対し、以下の処分を科す。学生自治会副会長の職務を解任する。全校に対し、公式に譴責する。本学年における一切の表彰資格を取り消す。公開の場での書面による謝罪を命じる】通知が出た瞬間、掲示板はまた騒然となった。今度は本当の意味で炎上した。【桜小路、人のスマホを盗み見た上に、人のカードまで使って買い物?これ、窃盗じゃなくて何なの?】【スクショを悪用して人を貶めるとか、こんな人が2年も学生自治会役員やってたわけ?】【桜小路美月が謝罪一つするくらいで済ませるわけ?彼女が桜井望に償わないといけない事は、謝罪一つじゃ足りないでしょ】特にあの2件の利用履歴が、致命的だった。たった4000円ではあったが、問題は金額ではなく、役職を悪用して人のカードを差し押さえ、その上で勝手に使ったという事実そのものだった。コメント欄では、法学を学んでいるという学生が、さっそく学びを活かし始めた。【これ、厳密に言えば窃盗か横領が成立する可能性がある。金額は小さくても、行為の悪質さは別問題】美月はその日の午後、謝罪の投稿をした。今回の内容は、以前茉莉が見せてくれた下書きよりもずっと長かった。明らかに、学校が書き直しを求めた結果だった。投稿には、スマホの盗み
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第9話

水曜の午後、教務課からメールが届いた。【桜井望さん:確認の結果、『特待生(十傑)』の選考資格が回復しましたので、今週金曜日の午後、再表彰式にご出席ください。】再表彰式の規模は、前回よりずっと小さかった。大スクリーンもなければ、2000人の大集会もない。あるのは一つの会議室と、学校の上層部、学部の上層部、それに数人の教員だけだった。だが、あるべき手続きは一つも省かれなかった。学長が自らの手で、表彰状と証書を私に手渡した。「桜井さん、この件の対応には学校側の不備があったと認識しています。お詫び申し上げます」私は証書を受け取った。「ありがとうございます」隣にいた学部長が、一言付け加えた。「田村先生はすでに担当教員の職を外れています。今後は新しい担当教員が、あなた方の学年を担当する予定です」私は頷いた。それ以上、多くは言わなかった。式が終わったあと、蒼真が本部棟の入り口で待っていた。木に寄りかかりながら、両手にミルクティーを2杯持っている。「もらえたか?」「うん、もらえたよ」私は証書を掲げて見せた。蒼真はちらりと見て、頷いた。「よし、あとで写真撮って、お前のおばあちゃんに送っとけ」「あんたが送ってよ」「なんで俺が」「あんたが送ったほうが喜ぶから。実の息子からメッセージが来たら、1週間は機嫌がいいよ」蒼真は数秒、黙り込んだ。「その言い方だと、俺が普段連絡してないみたいじゃないか」蒼真はミルクティーを私に差し出した。「ほら、飲め」私はそれを受け取った。「叔父さん」「叔父さんって呼ぶな」「ありがとう」蒼真は一瞬、動きを止めた。それから視線をそらして、ミルクティーを一口飲んだ。「何がありがとうだ、あたりまえのことだろ」蒼真は少し間を置いた。「それに、厳密に言えば俺のせいだ」「何が?」「最初から隠させたりしなければ、あいつだってこれを利用できなかった」「じゃあ、これからも隠すの?」蒼真はしばらく考え込んだ。「もう隠さない」「じゃあ、叔父さんって呼んでいい?」「学校の外でならな」「学内では?」「先輩って呼べ」「それ、前と何が違うの?」「違うのは、お前が『先輩』って呼んでるのが実は叔父さんだって、今や全
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第10話

「じゃあ、牛乳一箱持って帰ってきてよ。おばあちゃん、あれ好きだから」「持って帰らない。この前3箱買ったんだ、まだ飲み終わってないんだろ」「それ、2ヶ月前の話でしょ」「一人じゃ、そんなに早く飲みきれないよ」「私もいるじゃん」蒼真は一瞬、黙った。「飲みたいなら自分で買え」「お金ない」「毎月、生活費振り込んでるだろ」「使い切った」「まだ15日だぞ」「夕奈に焼肉おごったの。あんたが出すって言ったんでしょ」蒼真は大きく息を吸った。ポケットからスマホを取り出すと、その場で1万円振り込んだ。「足りるか?」「足りる」「牛乳は2箱でいいから」「わかった」「もう俺のカードでお菓子買うなよ」「じゃああんたも、もう服押し付けてこないで。クローゼット、もう入りきらない」「あのコートは本当に着られないだけだ。押し付けたわけじゃない」「太って見えるって、自分で言ったくせに」「実際、太って見えるんだよ」「187センチ、70キロで、誰に対して太って見えるっていうの」通りかかった女子学生たちが、この会話を耳にして、明らかに歩調を緩めた。そのうちの一人が小声で言った。「あの二人、本当に叔父と姪なんだ……」もう一人が続けた。「それにしては、仲良すぎない?」蒼真の耳の先が、わずかに赤くなった。そのまま背を向けて歩き出した。「忘れ物すんなよ」「何のこと?」「お前のおばあちゃんに頼まれたマフラー、俺のマンションのテーブルの上にある」「なんで早く言わないの!」「今思い出した」蒼真は数歩歩いてから、また振り返った。「それと……期末、ちゃんと試験勉強しろよ」「点数悪かったら、おばあちゃんはあんたを叩くの、それとも私?」「俺を叩く」蒼真は無表情のまま言った。「だから、お前はちゃんといい点取っとけ」私は蒼真の後ろ姿が遠ざかっていくのを見つめた。通りかかる人は、もうひそひそ話をしない。スマホを掲げて写真を撮る人もいない。掲示板に投稿する人もいない。廊下に日差しが差し込む、なんでもない火曜の午後。まるで何も起きなかったみたいだった。だが、何かが変わったことを、私は知っていた。以前は、学校で私と蒼真はただの他人同士だった。今は、廊下で牛乳
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