試着室から出てくると、父がまだおずおずと説得していた。「要さん、俺はこの服で構わないんだが、渚の結婚式は一生に一度のことなんだよ」傍らで江里子が寂しげに俯いた。「おじ様、私が離婚したから、私の物を蔑んでいるのですか?それなら、持ち帰りますわ」「皆月さん、江里子も善意でやってるんですよ。そこまで酷いこと言う必要はないでしょう」要は警告を込め、冷酷な口調で言い放った。「彼女は繊細なんですよ。そんなこと言えば、彼女を傷つけるだけです」父の顔色がさっと青ざめた。私は手にしたドレスを強く握りしめ、胸の奥に鋭い痛みが走った。繊細?じゃあ、私とお父さんは?私たちは傷ついてもいいっていうの?「渚、どうしてまだドレスに着替えていないんだ?」要は振り返り、私のそばに来て低い声で言った。「あのドレスは少し古いが、生地はいいんだ。普段からそういう『ヴィンテージ風』の服を着るのが好きだろう?お前が一番聞き分けがいいのは分かっている。いいから、早く着替えて見せてくれ」聞き分けがいい?私は彼の手を振り払った。確かに聞き分けが良かった。良すぎて、この7年間自分に新しいスカートを一着も買ったことがなかった。私の持っている服の多くは古着か、格安でかき集めてきたものばかりだった。穴あきのセーター、黄ばんだ上着を、7年間ずっと着ていた。だが、要に罪悪感を抱かせないよう、いつもわざと冗談めかして言っていた。「これが『ヴィンテージ風』って言うのよ。好きで着てるんだから!」当時の要は、何度も私に誓っていた。将来、世界中のドレスを私の目の前に届け、好きに選ばせてやると。私も長く待った。だが、江里子が帰国してまだ一ヶ月しか経っていないのに、要は彼女に高級ドレスを十数着も送り、彼女の「新生」を祝った。それなのに、私が待たされたのは、お下がりのボロ切れだった。私は前に進んだ。「着替えないわ。お父さん、その服を脱いで。帰りましょう」「渚!」要の声には、すでに不機嫌が滲んでいた。しかし私は無視して、父のジャケットを脱がせるのを手伝った。その時、一枚の癌の診断書が、突然ポケットから落ちた。「これ……」私の手が激しく震えだした。「お父さんの診断書じゃないわ!これ、どこの誰が死んだときの
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