怜司が帰ってきたのは、すでに深夜だった。瑠奈に体を支えられ、2人で玄関を入ってくる。ソファに座っていた私と、目が合った。「まだ起きてたのか?」怜司は眉をひそめる。「今日は会社の食事会だって言っただろ」その口調はいつもどおりで、少し不満げだった。まるで何事もなかったかのように。ぴったり寄り添う2人の体を、私は黙って見つめた。私が口を開くより先に、瑠奈が慌てて一歩離れる。「紗月、誤解しないで。怜司さん、かなり飲んでたから、送ってきただけなの」怜司さん?一瞬、思考が止まった。瑠奈は大学時代、寮で同室だった友人だ。会社に紹介したのも私だった。そのころは、緊張した様子で怜司を久世社長と呼んでいたのに。いつの間に、呼び方まで変わったのだろう。瑠奈には答えず、怜司に視線を向けた。「どうして入院費を承認してくれないの?」彼は眉間をもみ、あからさまに面倒そうな顔をする。「お前の頭には金のことしかないのか?瑠奈が送ってくれたんだ。先にお茶くらい出せよ」私は座ったまま動かなかった。「56万円ものプレゼントをあげたんだから、送ってもらうくらい当然でしょ?」その言葉に、怜司の顔が険しくなる。「俺のスマホを見たのか?」こんなときまで、真っ先に私を責める。一瞬、沈黙が落ちた。先に口を開いたのは瑠奈だった。落ち着いた様子で近づき、私の腕をつかむ。「紗月、怒らないで。私があなたの友達だから、怜司さんは誕生日プレゼントをくれたのよ」私は、その手を見下ろした。1年前も、同じ手で腕をつかまれた。ただ、あのときの目に浮かんでいたのは懇願だった。「紗月、久世社長に頼んで、私を会社に入れてもらえない?いつか絶対、恩返しするから!」同じ大学で過ごした仲ということもあり、彼女がうちの会社に入社できるよう、私が手を回した。まさかその恩返しが、申請を何度も青で却下することだとは思わなかった。私は彼女の手を振りほどき、手首をこすった。瑠奈が傷ついたような目で怜司を見る。案の定、怜司は前に出て彼女を背中にかばい、冷たい目を私に向けた。「なんで瑠奈に当たるんだ?ルールを守ってるだけだろ。契約を取ってくれたから、その褒美にブレスレットを贈った。当然だ。いちいち揉め事を起こすなよ」私は腰
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