秋の夢、遅き哀しみ海野家が破産したあの年。海野悠依(うんの ゆい)は借金を返済するために自らを売った。
堀家へ。
堀家の奥様――堀芳江(ほり よしえ)の意向で、悠依は堀家の一人息子・堀辰景(ほり たつかげ)と結婚することになった。
ただそのとき、辰景には愛する女性がいた。
――仲程伴奈(なかほど はんな)だ。
伴奈のためなら、辰景は後継者の座さえ捨てる覚悟だった。
芳江はそれを察し、自殺で辰景を脅した。
「海野悠依と結婚しなさい」
挙式の日、伴奈は別の男性と電撃結婚し、海外へ旅立った。
辰景は車を飛ばして追いかけたが、途中で交通事故を起こした。
彼の元から、伴奈は完全に消えた。
それからというもの、辰景は愛する人とすれ違った痛みのすべてを、悠依にぶつけた。
あの日から、悠依の人生のすべてには値札がつけられるようになった。