「希純が好きなの?」
「……好きよ」
静かに問われて答えると、姉の美月は「そう…」と呟いたきり、もうその視線さえ向けてくれなかった。
彼女は対面のソファに座って、ただ黙っていた。
美月は本当に綺麗だった。
今も自分とは違ってほとんどノーメイクで、それなのに透明感のある白い肌と薄赤いふっくらとした唇。睫毛は長くカールして、柔らかい日差しにその影を頬に落としていた。
髪の毛はふわりと柔らかそうで、思わず触りたくなる。
彼女の細身のスタイルに今日は白いシフォンブラウスと、タイトな臙脂色のスカートを合わせていて、そこから出る引き締まった脚は女の自分ですら目を奪われるほど形が良かった。
「なに?」
じっと見ていたからか、気怠げに問いかけられた。
それに首を振り、だが訊かずにはいられなかった。
「気にならないの?」
「何が?」
「私と希純兄さんのことよっ」
「……」
彼女はしばらく考えて、緩く首を振った。
「もういいわ」
その答えに奈月は眉を顰めた。
あんなに義兄さんの事愛してたのに…?
奈月は彼女が何を考えているのかわからず、言葉が継げなかった。
2人の間に沈黙が下りた。
そうしてしばらく経つと、不意に「奈月」と呼びかけられた。
「なに?」
「用がないなら帰ってくれる?眠たいから」
ふぁ…と欠伸をした美月に、パチパチと目を瞬いた。
「本気で言ってる?」
「ええ」
「寝てないの?」
もしかして自分たちの事で眠れなかったとか…?
ほんの少し罪悪感のようなものが湧いて、心配げに問うと、軽く否定された。
「お腹いっぱいで眠たいの」
「………」
心配して損した!
奈月は鼻息も荒くサッと立ち上がると、スタスタと部屋を横切り出て行った。
残された美月はキョトンと彼女の背中を見送って、それからもう一度ソファにゴロンと寝転んだ。
「変な娘ね……」
そう呟いて、今度こそ目を閉じた。
夢の中で、彼女は妹と一緒にピアノの前に座って微笑っていた。
「お姉ちゃん、ピアノ上手ね〜」
小さい妹が椅子に座って、足をぶらぶらと揺らしながら可愛い顔で自分を見つめていた。
「奈月もすぐ上手になるよ」
「ほんと?」
目を見開いて訊くのに頷いてやると、「わ〜い!」と益々足を揺らし、危うく椅子から転げ落ちそうになった。
「奈月!!」
慌てて抱き寄せると、彼女は嬉しそうにぎゅっと抱きついてきて言った。
「お姉ちゃん、大好