「あかり、見て!お寺で特別にお願いして手に入れたお守りよ。枕の下に置いて寝ると、お腹の赤ちゃんのためにいいんですって」
「このお守り、20万円もしたの。二つ買ったから、親友同士で一つずつね」
懐かしい声を聞いて、私は急に目が覚めた。
岸本美咲がお守りを私の手に渡した時、私は本当に蘇ったのだと実感した。
無意識に自分のお腹に手を当てる。冥界の王との取引のことを思い出すと、涙が込み上げてきた。今、お腹の中にいる子は、もう私の子ではない……
前世では、錦鯉が刺繍された赤いお守りが、私と美咲の運命を入れ替え、私たち母子を死に追いやったのだ。
美咲は孤児だった。幼い頃から、うちの家族が彼女の面倒を見ていた。同じ学校に通い、次第に何でも話せる親友になった。
私が妊娠して結婚した日、彼女は新居の前で周東拓也に「あかりのことを大切にして」と頼んでいた。
数ヶ月後、彼女も妊娠し、私のために高額なお守りまで買ってきてくれた。
その時は感動で涙が溢れ、毎晩お守りを枕の下に敷いて眠った。
しかし、一ヶ月後の出産の日、美咲はDNA鑑定書を手に両親の前に土下座し、私を指差して罵った。
「お父さん、お母さん、私こそが本当の娘なんです!林田あかりは偽物です。私たちが生まれた時に、彼女の実の母親が私たちを取り替えたんです!それに、この子は拓也さんの子供じゃありません。不倫相手の子供なんです。私のお腹の子こそが周東家の血を引く子なんです!」
私は衝撃で彼女を見つめ、陣痛の痛みをこらえながら起き上がった。
両親は当然信じようとせず、すぐにDNA鑑定をやり直すと言い出した。
数時間後、拓也は怒りに震える手で検査結果を持って部屋に入ってきて、私をベッドから叩き落とした。
「林田あかり、子供を盾に取って結婚を迫ったくせに、まさか他人の子供だったとは。ずっと美咲のことを愛していたから良かった。でなければ、お前が死んでも許せなかったぞ!」
拓也は検査結果を私に投げつけると、美咲を抱きしめた。
美咲は彼の胸に顔を埋めて泣きながら言った。「あかり、あなたが長年両親の愛情を独占してきたことを、私は一度も責めなかった。以前、私を仲間外れにしたり、いじめたりしても、実の姉のように思っていた。でも、拓也さんと結婚するために、不倫して子供を作るなんて……ごめんなさい、あかり。もうこれ以上間違った道を進ませるわけにはいかないの」
私は床に散らばった検査結果を一枚一枚拾い上げ、顔が青ざめていった。
「違う、違うの、私は何もしていない、してない……」
慌てて首を振りながら、両親に這い寄った。
「お父さん、お母さん、私は……」
両親は一歩後ずさり、冷たい目を向けた。「もういい。お前を育てたのは家族の利益のためだ。仕事の能力は美咲に及ばず、今や身分まで偽物だと分かった。もうお前に用はない。出て行け。その私生児を連れて林田家から出て行け。今日からお前は私たちの娘ではない!」
義理の家族はさらに私を水性の女と決めつけ、偽千金は周東家の評判に関わると言い、拓也に即刻離婚を迫り、真の令嬢である美咲と結婚するよう促した。
その日のうちに、私は子供と共に両家から追い出され、路頭に迷った。
涙に暮れながら、家族や友人に電話をかけたが、例外なくブロックされた。
十一月の雪の日、無一文の私は赤ちゃんを抱きしめながら路地裏で授乳していた。
そこを物あさりのホームレスに見つかってしまった。
結局、私の子供は連れ去られ、私は凌辱を受けた末に自ら命を絶った。
死後、冥界の王から真相を告げられ、これら全てが美咲の策略だったことを知った。
彼女は私にお守りを渡したのは、私と命を交換するためだったのだ。
その後、冥界の王は私に蘇って復讐する機会を与えると言った。
ただし条件がある。私のお腹の子は、鬼子となるということだ。