きたきた。社長の気まぐれ絶対命令。期限は社長が次に思い出した時。
「なんであたしなんでしょう?」
釣りに託(かま)けて違うものひっかけたんじゃ。わー、またオヤジみたいなこと考えてる、あたし。
「悪いんだけど」
「でもですね」
会長の浮気なんて社長の眼中にあるわけないな。とすると、ハンカチに付いてるかすれたような赤黒いシミのほうか。
「わたしには手に負えそうにない。だからヒビキに頼んでるわけ。内々に」
会長は社長の鬼門ですもんね。それに、これ以上は断るな光線が出てますよ、社長の目から。よ! は! よけらんない。
「ヒビキ、なにやってる?」
「あ、すみません。その件お受けしますけど、他とバッティングすると」
「あ、それは大丈夫。仕事じゃないから、これは」
って、人はだれしもそうだと思いますけど、一応あたしの時間軸も一本なんですけどね。
「わかりました。でも、少し時間をください」
「もちろんよ。ヒビキがこの企画戦略室のなかで一番忙しいのはよく知ってるつもり」
なら、他の人に振ってくださいませんかねって、無理か。
「じゃあ、日程感は今月中とかっていうのでいいですか?」
「いや、3か月あげる。それまでに解決して頂戴」
なにをですか? とっかかりも見えてないのにいきなり。って言っても無駄なようなので。
「わかりました。3か月のプロジェクトということで。稟議書あげなくていいですかね」
「いいわよ。それでお願いした」
「ドキュメントの提出は、完了届だけということで」
「OK。じゃあ、ヒビキはすぐ帰りなさい。今日はゆっくり休んで、明日からまた頑張ってちょーだい」
「了解です。これ預かりますね」
ばりレディース仕様のガラケー。
「うん、持って行って。返さなくていいよ。終わったら雄蛇ヶ池にでも捨ててね」
「して殿、報酬は?」
「近江屋、おぬしも悪よの。望みを言え」
「では、厚生室をシャワールームに」
「ヨキニハカラエ」
「失礼しました」
「あ、ヒビキ。北村呼んでくれる。どーせ忘れてるから、あのボケ」
北村シニアマネ、カワイソーニ。なんだか社長の水平リーベ棒にされてる感じ。
「便利化学社の健康グッズ
『水平リーベ棒』
あなたの乱れたココロを水平に保ちます」
そういえば、子ネコちゃんどうしてるかな。ミルク