社畜OLと天然ギャルがヴァンパイア退治! 【あらすじ】 舞台はヴァンパイア伝承残る「辻沢」 高校3年の夏に起った辻沢女子高校バスケ部員連続失踪事件。 当時バスケ部員だった二人の女性 社畜OLのヒビキカリンは親友を 天然ギャルのシラベレイカは幼馴染みを失いました。 4年後の夏 心に深い傷を抱える二人が 街を裏で支配するヴァンパイアへの復讐を誓い 行方不明のメンバのため 果たせなかったラストゲームに挑みます。 【構成】 章ごとにヒビキとレイカが交互に語る二人語りです。 表紙は、ぱくたそ「2155」氏作品より
View More「愛には牙がある。噛みつくのだ」
(スティーヴン・キング『スタンド・バイ・ミー』〈恐怖の四季 秋冬編〉)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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「あれ、さっきの実況で映ってた倉庫じゃないかな」 ちょっと広めの空き地。動くものはないっぽい。街灯が寂しげだ。 「さっきの実況、やっぱり同じ画面のまんま。うん、あの倉庫でいいみたい」 停めるの? やめとこーよ。降りるの? 絶対ダメだって。降りた人が最初にやられるって思ってると、車の中にもうナンカが潜り込んでて、最初に車の中の人やられて逃げ道なくなって全滅なシチュだから。そうじゃなかったら、降りた途端倉庫からナンカが信じられない数出て来て、みんながやられる中必死で逃げ回って、一人だけ助かったと思ってほっとしたところを土の中とか、木の上とか思わぬ角度から襲われてどのみち全滅なシチュだから。でも、降りるのね。はい? ウチだけ? 「ウチは動画撮らなきゃ。運転もあるし」 「セイラは、ゴマすらなきゃ」 なに言ってんの、あんたたち。とくにセイラ。 結局ウチか。一応武器って、なにこのホーキ。古い枯葉が積もってるから掃いてけって? ショージキいらない。で、なんでカレー☆パンマンの被り物すんの? どっから出て来た? 「レイカ小顔だし、暗くて見えにくいから」 なるほどって被っては見たけれど暑苦しいし見えにくい。ルームミラーにカレー☆パンマンの顔。悪くないね。 懐中電灯持って外。なんか変な臭いしてる。しめった落ち葉が靴にくっついてくる。ウエアブルカメラを探せっていわれてもね、暗くてよくわからないよ。 「もちょっと、左のほうじゃないかな。あ、カレー☆パンマンとホーキ映った。右右、そっち左。そう、そのまま前」 あてずっぽうにそこらじゅうを足ではらってたら、何か蹴った。ころころって。 「レイカ、どうした?」 「何か蹴っちゃったみたい」 「なんで蹴る? それ拾って」 どれ? 見えないよ。ん? なんかにつまづいた。すり鉢だ。ほっとこ。カメラ、カメラはっと。これ? 黒い目玉おやじみたいなやつ。 「それ! それだよ。レイカ。だから、蹴らなくていいから。手で持ってきて」 はいはい。 なんか音した。後ろで。やばいやつかも。ウチ、チョッカン信じてるから
森の中の真っ暗な道をゆっくりと進んで行く。明かりと言ったらヘッドライトだけ。「入れたものの」「ナニすればいいの?」 しばらく行くと、受付の札が立ってるのが見えた。「ちょっと様子見て来るよ」 車を脇に停めてカリンが一人で出て行った。二人きりになるとセイラはカバンからノートパソコン出して、いつもの真っ赤な画面表示させた。それからセイラはスマフォとパソコンで忙しそう。つまんないからウチはシートに横になってたら、「ちょっと! レイカ。やめてよ怖がらすの」 どしたの?「ミラー見たら、消えてるから」「寝転んでただけだよ」「もう」 変なの。 カリンやっと帰って来た。どうしたの? 顔色悪い。「何か分かった?」「収穫なし。『R』のほうはどう?」「だめだね。システム障害の情報だけ。マップも見られなくなってる」「スレッターは?」「こっちは運営へのヒボーチュウショーばっか」「実況は?」「動画のリンクは死んでるっポイ」 やっぱ帰ろ。ここなんだか気分よくない。「あ、ゴメン、PCの位置情報許可してなかった」 セイラ、会社のSEさんみたい。複雑怪奇なパソコン世界の全知全能者。そーいう仕事してるの? ウチ、それさえ聞いてあげてなかった。「F5っと。でた。やっぱりエリア内だと見れるんだ、生実況」 セイラがノートパソコンの手元のちっさい四角い所をこちょこちょいじって操作してる。マウスなくてよくそんなことできるよ。パソコンから声だけ聞こえて来た。〈システム障害の間隙を襲って、我が隊はAH地点を進攻しています。ミッションナンバーは何になるんすかね。後で運営にナンバーつけさせよう。そもそもヤツラの落ち度なんだし〉「カリン、あれ!」 すり鉢男たちがヘッドライトの光を横切って行った。ひょっとして、今実況してた人たち? すぐ暗闇の中に消えちゃったけど驚いた顔してた。ここ本当は車で入る場所でないのかも。 画面を眺めてたセイラ言った。「この
トリマ、ウチらは0時になる前にカリンの車にのって、現地に行ってみることにした。途中でヤオマンBPCってファミレスに寄ってご飯食べようってなったんだけど。なんで? さっき食べなかったっけ。ここでも、カリンとセイラはお肉をモリモリ。ウチはなんだか食べそびれちゃった。もったいなかったけど、残しちゃってカリンにほとんど食べてもらった。 セイラのマンションの前の道に車停めてセイラの準備待ち。 「おまたせー」 セイラが戻ってきた。荷物取りに寄ったの。 「セイラ、何持ってるの?」 「ん? これ? セイラのゴマスリセット。スリコギの絵柄なめネコなんだ。カワイっしょ」 本格スリ鉢とスリコギセット(5400円)、スリコギに「なめてっと、すりつぶすぞ」って書いてある。 「なんで持ってるの?」 「これないとさ、やばい」 なんで? セイラ助手席にすっぽり収まって、彼女さんみたい。すり鉢抱えてなければのハナシ。 「大丈夫かな。いきなり行って」 『R』(どっぷりだね。こう言うようになっちゃ)に参加するにはいろいろメンドーな手続き(血の団結式とか?)がいって、今夜ってわけにはいかないから、ウチらはオシノビってことらしい。カリンが、 「こっちは辻沢の住人だから、『すみませーん、道に迷っちゃってー』で、とーす」 「住人が道に迷うムジュン」 ってセイラ。 「うっさい、黙れ笑」 宮木野神社前。境内に誰もいなさそう。ジーって虫の声だけしてる。 「たしか、ここがスタート地点のはずだけど」 「『R』見てみよ。何か出てるかも」 「あれ、SIMカード差せっておこられた。レイカどしたのこれ」 ガラケーに差したまんまだった。はい。ガラケー。 「イマドキ、ガラケーって。なんで?」 「だって、そのスマフォ反応悪くって」 「え? それまずいな」 セイラ、あっというまにSIMカード入れ替えちゃった。すごい。 「ぜんぜんフツーに動くよ。接触かな」 どぃうこと? 「まだ
スレッター、例の『スレーヤー・R』ユーザ専用SNS、ちょっと分かったことがあるから見て欲しいって、カリンが。やだなって思ったけど、この間、バス停でカリンが言った「シオネとココロのため」ってのが気になってて。 「ココロやシオネをあんなにした奴がまだのうのうと生きてると思うとね」 「なんで生きてるって思うの?」 「殺したヴァンパイアが死なない限り、ココロやシオネはあのまんまだから」 「それとゲームと何の関係が?」 「そいつがゲーム運営にかかわってる気がするの」 また、気がするなの? パソコンの画面、真っ赤で目が痛い。動画やってる。この間の連中みたいのが暗がりでスリコギ振り回してる。誰と戦ってるの? みんな仲間みたいだけど。あ、万歳した。 〈ミッションレベル1。初の改・ドラキュラ殲滅、成功。このゲームに比べれば、他のARゲームなんかクソでしょ。リアル戦闘感ハンパない。仕留めた時がめっちゃ良き。俺氏、興奮しすぎ? 次は、カーミラ・亜種。第七ヘルシング隊でした〉 〈カケダシガンバレー〉〈みんな知ってるぞ〉〈そのために高額課金に耐えたんだろーが〉〈PT名がオモすぎー〉〈氏ぬなー〉〈いや、むしろ氏んで来い!〉 だって。 「この人たち何やってるの?」 「多分『スレイヤー・R』。リアルサバゲーだよ」 「『スレイヤー・R』?」 「『V』とは違って『R』はゲーマーが実際にフィールドに出てプレーするゲームなんだ」 中の人たち本当に面白いのかな? リアルって言うけどごっこ感強い気がする。 「すごく接近して撮ってるんだね。誰が撮ってるの?」 「ゲーマー自身が身に着けるカメラで撮ってるから」 「ウエアラブルカメラ。ゴリプロっていうやつ。ヤオマンでも売ってるよ」 「これって、どっかのテーマパークでやってるの?」 「何言ってんの? レイカは。辻沢だよ。辻沢町全域がフィールド」 「この間、こいつらに遭ったじゃん。すり鉢被った奴ら」 おこられた。しょぼん。 「他に聞きたいことある?」 ないけど、ない
台所からカリンの声は聞こえない。お母さんのすすり泣きの合間に聞こえてくる、 「……優良企業の正社員に……そろそろ、いい人見つけて……お付き合いしてる人は」 みたいなこと、ウチもママによく言われたよ。 セイラは、カリンのPC立ち上げて真っ赤な画面ずっと見てる。カリンの部屋初めて。壁に大きなお札貼ってある。霊媒師さんからもらったのかな。 他にすることなくて、カリンの本棚物色。『ネコの医学』、『動物学大全』、『動物医療の最前線』、『獣医のこころえ』。ずいぶん難しそーな本読んでる。ウチ、難しい本読むと頭の中でせせらぎの音がサラサラサラってずっとしてるから、頭に入ってこない。 『女バスな人にも分かる! 経営学入門』だって。 これなら読めそう。 あ、これはー、うしし。 『ココロとカリンの交換日記No.1』。 表紙、めっちゃデコってあってココロの字で「夢」。ココロ、こういうオトメ好きだった。何書いてあるんだろ。 カリンが部屋に入ってきた。やば。カリンは壁のお札を目にすると舌打ちして剥がし、ゴミ箱に放り込んだ。ナイスシュート。カリンこわい顔。 「麦茶しかなかった」 お盆にコップ3つ。ウチ、いらないです。 「レイカ。そのノート、見てもいいよ」 こういうのなんて言うんだっけ。ジゴショーダク? なんか、トーサツした気分。カリンたらウチの横来てノートを開いて。だから、ゴメンって。 「ちがうんだ。見て欲しかった。ココロが何をしたかったか。あんなにならなかったら、今頃、どんなになってたか」 わかった見るよ。そんなに急かさなくっても。 「ココロとウチの夢の実現ノート」 カリンがノートのページを指して、 「『No.1』の最初のページ。『カリンの夢、獣医さん。ココロの夢、ネコカフェ。二人の夢、ネコにゃんリゾート(仮称)の経営』。乙女でしょ、ココロ。ウチ、獣医さんなんて夢、持ってなかったんだ。でも、ココロと一緒だったらウチもやってみようって」 そうだったんだ。全然知らなかった。 ノートの内容、全然乙女じゃなかった。バスケノートみ
ミワちゃんとナナミは、またまた用事があるって先に帰っちゃった。取り残されたウチらはカラオケ行ったけど、すぐ飽きちゃって『この花』の主題歌みんなで歌ってお開きにした。泣けた。 「レイカ。あのね」 「セイラ。ゲームなら」 そんなだから、ミワちゃんたちも。 「分かってる、でも」 カリンがセイラを制して、 「レイカ、今日、車あるから送るよ」 ありゃりゃ、まだ9時じゃん。ニーニーのいるあそこに戻るの、やだな。 「ゴメン。カリンち、泊めてくれないかな」 「え? いいけど。汚いよ」 「それなら、セイラも行く」 「PK?」 「なに?」 「PKってく?」 「パンツ買って行くでPKは無理あるよ」 うわー。ムラサキの軽自動車だ。これがカリンの車? ウチ、後ろ乗るー。おっと、横に開くのね、このドア。バスケのボール置いてある。わかるよ。女バス出身者の心のよりどころだもんね。ガーーバン。ふーん、中こんななんだ。わりと広いね。天井も高いよ。アタマ、ほれ、ほれ。届かない。座席もっふもふのふっかふか。気持ちいー。 「ナニあばれてんのよ。レイカ」 「ごめん。つい」 カリンが運転してる。コーコーの同級生が運転する車に乗るのって変な感じする。ってか、カリンの運転アライ。酔った、テキメンニ。 途中一回エチケットタイム設けてもらったけど、何とかたどり着いた。カリンの家は、東揚屋団地。お母さんと二人暮らし。 「入りなよ」 「おじゃましまーす」 「おじゃましまーす」(小声)。 「おかーさん、ただいま」 「夜分にすみません。お邪魔します」 「あら、カリン。おかえ……。ひいーーーーーーーー!」 おかーさん、奥に行ってドア閉めちゃた。 「あ、やっば。このかっこ」 そっか、「血塗られたJK」じゃやばいよね。 ゴリゴリゴリゴリ。 「すぎこぎごりごりもうすぐあさがごりごり……」 カリンのおかーさんてば台所の隅ですり鉢抱えて、
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