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夜野たけりゅぬ
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Novels by 夜野たけりゅぬ

ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)

ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)

「辻沢シリーズ」第2弾 女子高生の夏波&冬凪が枯死した世界樹を建て直す話です。 舞台は『辻女ヴァンパイアーズ』から 20年後のメタバースがインフラ化した現代の辻沢。 20年前の辻沢町役場倒壊事故と辻沢町要人連続爆死事案の背後に 蠢いていた怪異に夏波&冬凪が巻き込まれるお話です。 『辻女ヴァンパイアーズ』のキャラもたくさん登場します。新しく辻沢町長になった辻川ひまわりと夏波&冬凪が共闘したりします。 レイカの大爆発スキルの真相も解明されるかもです。 全43万字の長編小説です。
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Chapter: 2-34.大曲大橋の攻防(2/3)
「雄蛇ヶ池で体調が悪くなって、ホテルに戻ることにした」「分かった。敵に襲撃されたんじゃなきゃ、それでいいよ」 敵の襲撃? そんなのがいるなら最初から言ってくれればいいのに。あたしが言葉を返さなかったことで察したらしく、「人柱を埋めた輩が反抗してくるはずだから」「それってどんな」「人の形してるけど見ればすぐヤバさが分かる」 明日の予定を伝えて電話を切り冬凪にスマフォを返す。「中止でいいみたい」「エリさん何か言ってなかった?」「うん。敵に気をつけろって」「敵ね。それって、ああいうヤツのことかな」 冬凪が指さしたバイパスの向こう側の歩道に、ボサボサの簔(みの)を着て破れた編み笠(あみがさ)を被った小柄な人が3人立っていた。それぞれが編み笠の破れの間から黄色く濁った目でこっちをじっと見つめている。どんよりと重苦しい空気が漂っているのはその人たちの周りだけかと思ったけれどそうではなかった。あたしたちの周囲のもの全てが無表情で味気なく、聞こえる音もずっと遠のいて感じた。まるで別世界にずれてしまったようなこの感覚は、鈴風と乗った辻バスで一度体験したものだった。あの時はあたしだけ成工女のギャルたちが見えていたけれども。「冬凪にもあれが見えるんだね」「うん」 あの時よりずっと心強かった。 その人たちはバイパスを通る車のことなどいっさい無視して道を真っ直ぐに渡ってこちらに近づいてきた。車のほうもスピードを緩めないけれど、別世界の存在だからなのかまったく衝突しないのだった。そして中の一人が中央分離帯を越えたあたりで、あたしはこいつらが相当ヤバいことに気がついた。簔の藁の間からいくつもの生首が覗いていて、その一つ一つが「ともがらがわざをまもらん」 と同じ事を呟いていたからだった。「冬凪。逃げたほうがよくない?」「逃げるっても後ろないから」 そう言えばこのバス停は大曲大橋の真ん中、つまり雄蛇ヶ池の真上にあるのだった。水面までおそらく十数メートル。落ちて生きていられるかわからない。「どうしよう?」「闘うしかなさそうだよ」
Last Updated: 2025-08-10
Chapter: 2-34.大曲大橋の攻防(1/3)
「今日の探索はやめにしてホテル帰って休もう」 冬凪があたしの頬の涙をハンドタオルでふきながら心配そうに言った。あたしは、突然放心状態になった場所から少し離れた木陰にしゃがんで心の整理を始めたばかりで何が起こったかすら気が回っていなかった。「大丈夫。ちょっと目眩がしただけだから」「全然ちょっとじゃなさげだったけども」「人柱、早く探し当てないと大変なことになりそうだから」 と言うと、冬凪は少しだけあたしの意見に耳を傾ける風に見えた。それでも冬凪は一度口にしたことは絶対に曲げない子だから、このままホテルに帰る事になるのは目に見えていた。「夏波は昨日こっちに来たばかりで、まだ体が慣れてなかったのかも。ごめんね。気をつけてあげなくて。あたしだって初めて来た時、ふわふわ感がなかなか抜けなかったもの。ま、明日もあるし、今日はゆっくり休も」 あれはふわふわ感とは違ったけれど、体がおかしくなる点で冬凪も同じだったよう。 さてと、帰ろうと立ち上がったらその場でなよって膝から崩れてしまった。「立てん」「あーね」 冬凪にすがってようやく立ち上がれたものの、これでは数歩進むのでさえ何分もかかりそうだった。「背負って帰れない事はないけど」 と冬凪は独りごとを言ったあと、ちょと考えて、「鞠野フスキにバモスくんで迎えに来てもらおう」 バッキバキのスマフォを取り出して電話を掛けた。「20分で来ていただけるんですね。大曲大橋のバス停にですか? 分かりました。よろしくお願いします」 冬凪は耳からスマフォを離すとぶすっとした表情で、「ここまで入ってきてくれればいいのに。鞠野フスキってば、あの砂利道はげんが悪いからバイパスまで出てきてってさ。なんなのかね。あの人時々ヘタレなこと言うんだよね」 冬凪に肩を貸してもらってもと来た砂利道をバス停に向かったけれど着くまでにさっきの倍以上かかった。バス停に着くと冬凪はあたしをベンチに座らせてくれて隣に座った。人心地ついてバイパス道を見ると、この時間帯は空いているせいかどの車もスピードを出して行き来していた。 冬凪がスマフォを取
Last Updated: 2025-08-10
Chapter: 2-33.エンピマン(3/3)
 エンピマン。ライフハックの防衛術の授業で何回も耳にした名前。女子高生ばかりを狙うシリアルキラー。殺し、解体、穴埋め、全てをエンピ一本でやってのけるからその名が付けられたという。てか、シャベルで解体ってどういうこと? 「清州女学館の子って」 「多分、バラバラ」   背筋が寒くなった。  女性4人は途中のバス停で全員下りて、代わりにサラリーマン風の男の人が何人か乗ってきて車内の雰囲気が一変した。バスが出発してしばらく、近くに座ったおじさんが冬凪とあたしの事をジロジロ見てるのに気がついた。 「何、あのおじさん。エンピマンじゃないよね」(小声)  と冬凪に言うと、 「違うと思うよ。あたしたち夏服着てるし、こっちでは今授業の時間だし」(小声)  そうだった。てっきり夏休みの気分だった。異分子はあたしたちの方だった。 〈♪ゴリゴリーン 次は大曲大橋です。雄蛇ヶ池に降りてもスケキヨにならないよう、お気を付け下さい〉  またスケキヨ。このアナウンスって鞠野フスキの発案なの?  バス停から橋のたもとまで歩いてバイパスを渡った。欄干が切れたところから池端に下りることができる坂道になっていた。  冬凪の後についてあたしもその砂利道に足を踏み入れる。池が近いというのにここは乾燥しているのか道ばたの雑草が白い埃を被っていた。敷かれた砂利の粒が大きいせいで足を取られて足首を挫きそうになる。でも、ここからの雄蛇ヶ池の眺めは素晴らしかった。エメラルドグリーンの水面にゆったりとした時間が流れていた。周囲を深い広葉樹林に囲まれていて風もなく静かそう。ただ、何かを探そうとすれば結構な広さがあって苦労しそう。  突然、前にここに来たことがあると思った。あたしはここに一度来たことがある。そんな気がしてきたのだった。デジャヴュだ。これまでも何度か経験はあるけれど、それは大概、夢で見たことを思い出したんだろうで済む程度だった。今回のは強烈だった。体が震えだした。右の薬指に激痛が走った。あたしは震える薬指を目に近づけてみた。  赤い糸が、それまで見えなかった赤い糸が薬指の根元にがっちりと結びつけてあって、そこから虚空に伸びて消えていた。いや
Last Updated: 2025-08-09
Chapter: 2-33.エンピマン(2/3)
 N市行きの辻バスが駅前ロータリーに入ってきた。発車まで3分だつたのでヤオマン・カフェを急いで出る。この時間はバイパス経由でN市へ行く人は少ないのかバス停に並んでいるのは中年の女性が4人だけだった。みなさんお仲間らしくずっと喋っている。 「ゴリゴリカード渡しとくね。3000円入ってるから乗る時使って」  冬凪がくれたのは、辻川町長が自分の趣味で作ったプリペイドカードで、宮木野線沿線の8女子高の夏冬制服を着た女子高生がプリントしてあるシリーズ。あたしのは桃李女子高の冬服バージョンだった。それを見てたら「♪桃李もの言わざれど下自ずから蹊を成す」と何故か他校の校歌が口をついて出た。冬凪が不思議そうに見ているのに気づいて、 「あ、あとで払うね」 「それ、役場のエリさんが来庁記念にくれたやつだから」  じゃ、遠慮なく。 「大曲大橋まで」〈♪ゴリゴリーン〉  一番後ろの席はやめて、出口近くの二人席に並んで座った。あたしたちの前にいた女性たちは、前のほうに座って会話の続きをしている。バスが発車する時間まであたしたちより後に乗って来る人はいなくて女性たちの声だけが車内に響いていた。  バスはロータリーを出ると右折して、一旦宮木野神社に向かう。宮木野神社前のバス停から市街地を抜け前方に田んぼが広がる交差点で左折すると、そこからがバイパス通りだ。交通量が増えてバスのスピードも上がった。開け放たれた窓から稲くさい風が入ってきた。それでも前の座席の女性たちの話声はかき消されることなく聞くともなく聞こえてくる。 「また出たって」  こちら側に座る小柄な女性が話題を変えた。 「何が出たっての?」  応えたのは隣でずっと笑顔の女性だった。続けて大柄で赤い髪の女性が、 「あれでしょ。シャベル男」  一番遠くの席の派手な見た目の女性が、 「あたしも聞いた。先月いなくなった清州女学館の子が西山に埋められてて、見つかるようにわざわざ赤い取っ手のシャベルが刺してあったんだって」  ずっと笑顔の女性が、 「いやーね。いつになったら捕まるのかしら」  小柄な女性が、 「ここの警察
Last Updated: 2025-08-09
Chapter: 2-33.エンピマン(1/3)
 次の朝、ホテルは9時前にチェックアウトした。駅前ロータリーで辻バスの時刻表を見ると、雄蛇ヶ池へ行くバイパス線が来るまで30分近くあったので、朝食をしようとロータリー脇のヤオマン・カフェに入った。コンテナハウスの店内はサラリーマン風の男の人が出口近くに二人いるだけだったので席を取る前に注文しても余裕だった。冬凪は生ハムサンドとカフェラテ、シナモンで! あたしはスクランブルエッグ&トーストとカフェラテ、シナモンで! この店は20年後にもあって、カフェラテにデフォで山椒粉をぶっかるのは知っているので、しっかりと念押ししておく。シナモンで! 冬凪とあたしが一番奥のカウンター席に荷物を置きに行っている間に注文した物が出来たようでバーカウンターに取りに行って、出てきたカップの中をしっかり確認して席に戻る。 「確かバイパスって雄蛇ヶ池の上を通ってなかった?」  バイバスは辻沢駅の西に位置する宮木野神社近くから南下して、大曲大橋で東に向きを変えN市に抜ける道だ。その大曲大橋が雄蛇ヶ池に架かっているのだった。 「バイパスからどうやって池まで下りるの?」 「橋が終わる所に砂利道があってそこから池端まで下りられたかと」  知らなかった。冬凪はそんなところまで調査してるんだろうか? 「詳しいね。あたしなんか辻沢に通ってるけど、あっちに行ったことないから」 「夏波はミユキ母さんに禁止されてたからね」  そうなのだった。小学生の時、お友達とチャリで行く予定を話したら、 「雄蛇ヶ池だけはダメ」  と秒で反対された。理由を聞くと、 「泳げないでしょ」  と言われてその時は納得したけれど、プールは行ってよかったのはどうしてなのかと今になって思う。 「ん? 夏波『は』禁止されてた? じゃあ、冬凪は行ってよかったの?」 「いいって言うか禁止されてなかった。夏波には内緒で何度か友だちと遊びに行ったりした」  冬凪は申し訳なさそうに白状した。冬凪とあたしとを同じに育ててくれたミユキ母さんのことを疑いはしないし、冬凪を羨ましがったり怒ったりはしないけど、とりあえず、その生ハム一枚ちょうだい。 「はい。どうぞ」
Last Updated: 2025-08-09
Chapter: No.3 東揚屋団地と辻バスと(3/3)
 浮き輪ファイトを笑顔で見ているカエラと呼ばれた子に目を向けるとボクに気がついて頭を下げた。そして二人を片手で指さしながら、もう片方の手を目の前で左右に振った。これはアイリとミノリの準備がまだ出来ていないことを表すボクとの符合だ。 カエラとミノリとアイリ。彼女たちは、辻沢を恐怖に陥れた女子高生ばかりを襲うシリアルキラー、エンピマンの犠牲者だ。彼女たちにとって辻バスが一番の思い出の場所だったため、霊となった今もここに居残っている。その中で最後にエンピマンと闘ったカエラだけが自分たちが死んでしまったことを理解していて、鬼子のボクが見える。「カエラ。誰に挨拶してんの? 怖い怖い。このバス、ウチら以外誰も乗ってないから」 ミノリと呼ばれた子がバスの中を見回しながら言った。  バスのアナウンスが入る。〈♪ゴリゴリーン。まもなく志野婦神社前です。クチナシ香る境内ではイケメンの誘惑にお気を付けください〉 バスが停まりボクが降車した後すぐ、あの子が続いて降りてきた。そして一定の距離を取るため急いでバスの後方へ移動して行った。ボクは通りを渡って志野婦神社の鳥居を見上げた。風に乗ってクチナシの香りがしている。境内への階段に目を移すと、その頂上に社殿の屋根だけが見えていた。そこに大きな乳白色の光の輪が輝いている。一瞬、月かと思ったが今は背後にあるはずだった。それで光の中心をよく見てみた。そこに人の姿があった。金色の瞳に銀色の牙。クチナシの精のような美しいたたずまい。志野婦だった。志野婦が笑みを浮かべながらボクのほうを見下ろしていた。ボクは階段を上りそちらに近づいていった。もっと側でその顔を見たくなったのだ。一歩一歩石段を踏んで上っていく自分の足がもどかしかった。ひと飛びであの胸元へ。ガッ!踏み込もうとした所を、後ろから腕を取られて我に返った。振り向くとあの子がボクの手首を掴んで首を振っていた。こんなに近接して大丈夫なのか。鬼子使いが近づきすぎると鬼子を刺激して危険なのだ。鬼子使いが鬼子に殺されることもあると夕霧太夫から聞いた。それを一番知っているはずのこの子がリスクを犯してボクを引き留めてくれた。(大丈夫)肯いてみせたつもりだったが、あの子
Last Updated: 2025-08-08
ザ・ラストゲーム・オブ・ 辻女ヴァンパイアーズ

ザ・ラストゲーム・オブ・ 辻女ヴァンパイアーズ

【完結しました】 社畜OLと天然ギャルがヴァンパイア退治! 【あらすじ】 舞台はヴァンパイア伝承残る「辻沢」 高校3年の夏に起った辻沢女子高校バスケ部員連続失踪事件。 当時バスケ部員だった二人の女性 社畜OLのヒビキカリンは親友を 天然ギャルのシラベレイカは幼馴染みを失いました。 4年後の夏 心に深い傷を抱える二人が 街を裏で支配するヴァンパイアへの復讐を誓い 行方不明のメンバのため 果たせなかったラストゲームに挑みます。 【構成】  章ごとにヒビキとレイカが交互に語る二人語りです。 表紙は、ぱくたそ「2155」氏作品より
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Chapter: 【あとがき】(設定、引用や参照、次回作について)
「ザ・ラストゲーム・オブ・辻女ヴァンパイアーズ」を読んでいただきありがとうございました。心より御礼申し上げます。応援していただくことがどんなにありがたいことか、それを知りました。だから今、読んでくださった皆様に夜野たけりゅぬから一生分のお礼の言葉を送りたいと思います。本当にありがとうございました。◎設定〇辻沢のヴァンパイアについて。 まず最初にお断りしなければなりませんが、辻沢は架空の土地です。夜野たけりゅぬの脳内にしか存在しません。 辻沢はこの国では珍しいヴァンパイア伝承の残る土地です。女子の乳犬歯を折る風習(辻沢の割礼)があったりします。そこに巣くっているヴァンパイアたちは、いわゆる吸血鬼とは少し違います。・吸血行為だけではヴァンパイアにはならないが、吸血されすぎて死んでしまうとヴァンパイアの劣化版の吸血ゾンビになる。・女女や男男の双子の場合どちらかに、男女の双子の場合は双方にヴァンパイア因子が遺伝する。・因子を持つものが大量の血液成分を摂取、または浴びると覚醒しヴァンパイア化(V化)する。・ヴァンパイアが正体を現すと個体特有の匂いを発する。クチナシやニセアカシアの花の香り、牛乳の匂い、菜っ葉の腐ったような匂い、古本屋さんの匂いなどがある。屍人のココロは日向ぼっこしてきた猫の匂い、同じくシオネはお日様差し込む体育館の匂いなど特有の匂いを常時させている。・目の中を覗くことで相手の来し方行く末を観ることが出来る。・弱点は山椒(気持ちよくなるだけ)とスギコギの唄(迷信、実際は効果なし)。・覚醒したてのヴァンパイアは「蘊蓄げっぷ」をする。 「蘊蓄げっぷ」とは、おっさんのような声で勝手に余計なことをしゃべりだす困った症状のこと。 Wikiに書いてあるような誰でも知っていることを得々と話すので人から嫌がられる。 摂取した血液に内在する情報の余計なものを体外にはきだす目的があるとされる。 個体差はあるが、V化して3か月ぐらいは続く。・太陽に対する耐性を持つ者(ザ・デイ・ウオーカー)が普通にいる。〇六辻家について宮木野と志野婦の血を濃く受け継ぎ、辻の字
Last Updated: 2025-06-30
Chapter: 【キャラクター紹介】
○響(ヒビキ)カリン  主人公 ヒビキパートの語り手  野良ネコにミルクをやるのだけが楽しみの社畜OL  遊佐セイラの影響でモバゲーにぶっこみ体験中。  無類の車好きだが、自分のは紫キャベツの軽自動車のため、  町長の愛車エクサスLFAが欲しくてたまらない。  辻沢のコングロマリット「ヤオマンHD」勤務。  ココロの親友。  元辻女バスケ部シューティングガード 6番○調(シラベ)レイカ  主人公 レイカパートの語り手  いつもぼけっとしている天然ギャル。  子どもっぽいところがあり、  辻沢出身なのに辻沢のことが全然分かっていない。  元はN市のブラック企業で働いていたが、  惨殺されたママの遺言に従って3年ぶりに辻沢に帰ってくる。  再就職先は役場の夜間窓口勤務。  元辻女のバスケ部マネージャー 13番希望○千福(センプク)ミワ  レイカの幼なじみで役場の同僚。レイカにやたらと雑草スムージーを勧めてくる。  新米ママで女バス時代もみんなのおかーさんだった。  仕事でもレイカのお守り役。  元辻女バスケ部センター 8番 副キャプテン○遊佐(ユサ)セイラ  モバゲーにぶっ込みまくってるガジェットオタ  モバゲー開発会社YSSの広報担当者。  ヤオマン会長の愛人。  シオネの親友。  元辻女バスケ部サブ 11番○蘇芳(スオウ)ナナミ  上背があってガタイが良く  ダッドキャップと白Tシャツ袖巻き上げ姿が似合いそうな、アニキ女子。  辻沢最大の山椒農園主。  考え方が保守的でSNSを一切使用しない。  オタク嫌いでもある。  レイカをボケだ、天然だ、pkし過ぎだと言いまくる遠慮を知らない人。  元辻女バスケ部パワーフォワード 5番●辻川(ツジカワ)ヒマワリ  口が悪く、時代劇と火サス好きのオヤジ女子だが、  クレバーな頭脳、シュッとした目鼻立ち、しなやか
Last Updated: 2025-06-29
Chapter: 【参考文献】
以下に参考文献を掲げるが、本編に描かれた内容のすべての責任は作者夜野たけりゅぬにあることを明記しておく。 ○山椒 ・新特産シリーズ サンショウ 実・花・木ノ芽の安定多収栽培と加工利用 内藤和夫著 農文協 2015 第6刷発行  ・WEBフリー百科事典 ウィキペディア 「サンショウ」の項 2016/6~9 参照年月 ○バスケットボール ・基本から戦術までよくわかる 女子バスケットボール 村松敬三監修 実業の日本社 2014 初版4刷刊 ・わかりやすいバスケットのルール 伊東恒監修 成美堂出版 2014 発行 ○怪談・ヴァンパイア・怪物 ・江戸怪談集 上中下巻 高田衛 編・校注 岩波書店 1989 初版 ・モンスター図鑑 ~SF、ファンタジー、ホラー映画の愛すべき怪物たち~ ジョン・ランディス著 ネコ・パブリッシング 2013年 初版第一刷 ○浄瑠璃・義太夫節・文楽 ・浄瑠璃集 新編日本古典文学全集77 小学館 2002/10 第一版第一刷発行  ・邦楽決定版2000シリーズ 義太夫 キングレコード 1963年 ・実践「和楽器」入門 伝統音楽の知識と筝・三味線・尺八の演奏の基本 財団法人 音楽文化創造 伝統音楽委員会監修 株式会社トーオン 2001年/10/20 初版発行 ・文楽・義太夫節の伝承・稽古を探る その1~4 後藤静夫 日本伝統音楽研究(紀要)8~11号 京都市立芸術大学日本伝統文化センター刊 ○雑草 ・道ばたの食べられる山野草 村田信義 偕成社 1997/6 1刷発行
Last Updated: 2025-06-29
Chapter: 最終章―完結 辻女ヴァンパイアーズはホーケー仮面と決着をつける
【ヒビキ】  セイラが窓の外を見ながらぼそっと言った。 「レイカって何なの? PKの自覚、なんもない。シオネやココロに会わせたのムダだった?」  PK、プレイヤー・キラー。自分のキルを稼ぐため敵味方見境なく殺すはぐれ者。ゲームでもっとも忌み嫌われる存在。 「辻沢に帰って来たくらいだし、実はちゃんと分かってるかもよ」 「ふつー分かるよね、そもそもレイカの髪型とか容姿、あの頃とまったく変わってない。ずるくない?」  確かに、レイカは高校入学当時からまったく変化ないよな。 「でしょ。宮木野さんが、レイカのことも『犬歯を牙とするもの』って言ったときレイカがうんうんって頷いてたの見て、『レイカあんた犬歯ないから』って突っ込みたかったもん」 あれはモチベを保つために宮木野さんが打ったレイカ向けの小芝居だけどね。 それに、あの時ホントのこと言ったら、それこそモチベ、ダダ下がりだったろうし。 だって、真実の父親殺しに行くんだから。 「歯並びのことだってそう。たちつてと言いにくそうとか」 「レイカの中学の時のあだ名、とっとこネズタローだったしね」 「レイカのボケはヤマハイ仕込みってレベルじゃないよ」  あれからスオウさんに色々聞いたけど、センプクさんの母乳でレイカをヴァンパイアにしたってのもホントーかよ、だし。 だったらヴァンパイアみんな赤ん坊の格好してるだろって。 だから今回のことは全部、レイカのママのギミックだったんじゃないかって思う。 レイカのママが作った時限爆弾、それがレイカだった。 けど、あたしがレイカのママのメッセージを間違えて送らなかったら、レイカは永遠に辻沢に帰って来なかったかもなんだよな。 そのせいでこの一連の出来事の意味を未だにあたしは見出だせていない。 本当はレイカのママはレイカ爆弾を起爆させるつもりはなかったともいえそうだけど、そこをさらに踏み込むと、 今回のことで一番目的を果たしたのはセンプクさんとツジカワさんたちだった。 いけ好かない養父を排除して、囚われの姉妹を助け出し、それを調家の娘に実行させた。 それはレイ
Last Updated: 2025-06-29
Chapter: 最終章-3 辻女ヴァンパイアーズはホーケー仮面と決着をつける
【ヒビキ】  エクサスLFAの車内を静寂が支配している。 音と言えば、セイラのPCから聞こえてくるくぐもった声だけ。 それは普段とは違う薄気味悪い会長の声だった。 〈あ、気付いた? いっとくけど、このカメラ赤外線対応だから。 あんたらカメラに映らないらしいが、動きぐらいは分かるようになった。 バージョンアップってやつさ。 うちの技術陣は優秀でね。どこよりも短い工数が自慢。 わが社のモットーは「拙速を尊ぶ」。 ヤオマン・システム・ソフトウエアをよろしく。 ちょっと宣伝〉 〈あんた何者?〉 〈ヤッチャ場から人気ゲームアプリまで。 皆様の暮らしを微に入り細に入りサポートする、ヤオマン・ホールディングス会長、前園満太郎です。あ、名刺切らしちゃってる。 でも、これから死んでく人には不要だね〉 〈ヤッチャ場? あんたも町長の一味?〉 〈あいつは、僕の腰ぎんちゃく。ヤッチャ場のゴミ捨て場で野垂れ死にしそうになってたのを拾ってやったんだよ。小物だけど頭の回転は速かったんでね。 2か月前の役場の事故で死んだときはびっくりしたが、あとからヴァンパイアだったって聞いて、かえって清々したよ〉 〈みなさん見てらっしゃるんだろ。そんなことひけらかしていいのか?〉 〈心配ないよ。この実況中継は関係者しか見てないから。 今はテストフェーズなの。スレイヤー・R・リブートの〉 〈なら、なんで宣伝してんだよ〉 〈まずいところは“編集”(耳の横でチョキチョキ)して、後でゴリゴリ動画にアップ。まさに無駄のない経営術〉 〈なんだお前。何ポーズとってるんだ?〉 〈おしゃべりはこのくらいにしておこう。リスナーは移り気だから、すぐ他行っちゃうからね。 とっとと死んでください。 辻沢には、もうヴァンパイアは必要ないんで〉 〈ヴァンパイアいないと、『R』になんないだろが〉 〈あー、それ? ユーザーから要望があってね。 怪我するのは勘弁って。今度からキャスト雇ってやることにした。 「中の人なんていません」ってね〉
Last Updated: 2025-06-28
Chapter: 最終章-2 辻女ヴァンパイアーズはホーケー仮面と決着をつける
【レイカ】 「こんばんは」  こんな夜更けに女子の部屋に土足でヘルメット? その上チェーン・ソー持参ってのはぶっそーすぎだよ、前園のオジサン。 「すまないね。窓が開いてたんで、屋根伝いにお邪魔しに来たよ」 「で、何の用? お茶しに来たわけじゃ、ないよね」 「あー、そうだね。そんな穏やかな用件じゃない。 君の命をいただきに来た」 「それはそれは、いらっしゃいませ。 そうやって、ママの命もいただいちゃったわけだ。 カスが!」  お葬式のあと、ママの命を奪ったやつがどこから侵入したのか考えてたら、ヘイちゃんが教えてくれたよ。 あんたが屋根伝って来たってね。 人嫌いのヘーちゃんをスルー出来るのあんた意外に誰がいる? 他の人間だったら食い殺されてるもん。「最近の子は目上に対する言葉遣いがなってないな。 それに君は女の子だろう。 もっと上品にしないといけないんじゃないかな。 そんなことじゃ、雄蛇ヶ池に捨てたママの首が悲しむよ」  首を捨てた?  雄蛇ヶ池に?  持って行っちゃったの?  お葬式でママの顔を拝めなかったのは、お前のせいだったのか。 「ミワちゃんが手引きしたの?」 「ミワちゃん? あー、あの腹ぼて女か。いや、関係ないよ」  そうなんだ。よかった。 「可笑しんだ。チェーン・ソー見せてやったら、産気づいちゃってね。 帰るとき『病院に連絡してって』って腰にすがりついてきたな。 振り払ったけど」  それってツリだ。ミワちゃん、お葬式のあとの出産だったもん。 「さっさとかかってこいや!  皆様が待っていらっしゃるんだろ!  ウチの血を!」 「ご名答。 それとヘイゾーのカタキ」 「え? ヘーちゃんは老衰じゃないの?」 「あ、そーだったかな。 まー、なんでもヴァンパイアのせいにするのが、辻っ子のいいところでね」ブウィ、ブウィ、ブウ
Last Updated: 2025-06-28
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