内海家のおじいさんとおばあさんのあの二人は、またお金がないことに苦しんでいて、自分の子や孫たちに正月にいくらかよこせと要求していた。それはおばあさんが入院してかなりの費用がかかって、老人二人の貯金を使い果たしてしまったので、不安になっているからだ。それで、子供たちから少しずつお金を集めて、老後の資金にしようと考えていたのだ。
智文は「父さん、唯花の夫の結城っていうあいつだ、あの男が結城社長、財閥家の結城御曹司だったんだ。あの金持ち家だよ、父さんも知ってるだろう。星城一の億万長者の名家だ」と言った。
それを聞いて、大輔はとても驚いた様子で息子を見ていた。まるで息子の話など信じられないといった顔をしている。
唯花の夫が、星城一の財閥家のあの御曹司だと?
億万長者の?
だったら、桁外れの金持ちなのではないのか?
「智文、それは本当か?」
「百パーそうだね、テレビ局のインタビューで言ってるんだから。俺らが会ったことのある結城理仁のことを、記者は結城社長って言ってるんだ。あいつだよ、間違いない」
大輔は事実確認をした後、すぐに自分の足をパシンッと叩き、息子に言った。「今すぐ父さんと母さんに、老後資金を確保する手段があると伝えに行くぞ。唯花の夫には相当な金があるだろ、一体どれほどの億万長者だ?億超えして、兆までいくんじゃないのか?じいさんとばあさんに唯花んとこに金せがみに行かせるんだよ。あいつがすこーしだけでも小遣いを落としてくれりゃ、二人の老後資金なんてすぐだぞ。
じいさんとばあさんに多めに金を取らせて、二人が死んだ後、その金を私らで分けるんだよ。つまり今金を取ればそれは後から私らのものになるってことだ」
大輔は自分の都合の良い方向に物事を考えていた。
姪が金持ちの家に嫁いだのだから、彼らもまた甘い汁が吸えると思っているのだろう。
まるで自分たちが唯花姉妹とは何の確執もないかのようなものの言い方だ。
大輔は息子の反応など一切構わず、彼をその場に置いて、せかせかと唯花の両親が残したあの家に住む自分の両親のもとへと急いだ。
理仁に会ったことがあって、彼の正体など全く知らない人たちがそのインタビューを見てどういう感想を持ったかなどは唯花は興味はなかった。彼女はただ理仁に会わなければならないとだけ考えていた。今すぐに彼に会いたいのだ。
彼女は車のスピード