Mag-log in玲は優秀で、二枚目だ。奏汰はそんな玲にはまってしまい、世間の目など気にせずに堂々と玲にアタックし始めた。奏汰はかなり度胸があると言えるし、それも玲の魅力が半端ない証拠だ。最初はよく理解できていなかった凪も、後で自分の伯母の二人の娘は星城にいて、伯母の次女の娘が結城理仁の妻である唯花だと知って、ようやくどういうことなのか腑に落ちたのだ。凪は自分がきっと誰かに似ていたのだろうと思った。奏汰の自分に対する様子から見て、凪は自分と唯花がとても似ているのだと察した。唯花は奏汰の従兄の妻だ。結城家の若者世代はみんな理仁のことを特に敬っているという。そんな理仁の周りにいる人のことを、彼らは自然と尊重するわけで、唯花のことも大事に思っているのだろう。凪も一度星城に行って、詩乃と唯花、唯月に会ってみたいと思っていた。凪は詩乃とは従姉妹関係にある。そして、唯花と唯月の姉妹も自分の親戚にあたるのだ。しかし、そうするのはまだ時期早々だろう。黛家当主の情報収集能力は高い。一族の中で星城に赴き、神崎夫人に会おうとしていた人間がいると素早く情報をキャッチした。すると彼女はすぐに人を手配して星城に行かせ、一族の人間が神崎夫人に会うのを阻止するだけでなく、柏浜に連れ帰り、厳しくしつけと警告をしているところだ。そんな緊張状態にあるタイミングで、凪が星城に行けるはずがない。母親のこの反応から凪はさらに疑いを深めていった。当時、母親が当主の座に就くために、汚い手を使ったのだろう。母親の姉と妹の死は、きっと母親の仕業だろうと凪は思っている。しかし、それを証明する証拠がない。彼女は裏でこそこそと聞きまわり、一族の中から証拠を見つけ出そうとしたが、今のところ何の手がかりも掴めていない。若者世代はこの事を知っている人はいない。当時の事を知っているであろう年代の人に尋ねても、口を割ろうとしない。彼らが星城に行って神崎夫人に会いたいと思っても、凪に母親の姉一家の死について語ろうとしない。「黛さん、こいつに構う必要はありません。私たちがいつ会おうと自由ですから。来たい時にはいつでも来てくれていいですよ」玲は凪にそう答えた。そして玲は弟を一瞥した。碧はこの時、姉はなんでそんなふうに見てくるのかと思っていた。姉は自分と黛凪をくっつけたいとまだ思って
玲がやって来ると、凪は立ち上がって挨拶した。「お邪魔しています、白山社長」玲は珍しく笑顔を見せ、凪に座るよう促し、微笑みながら尋ねた。「黛さんはいつこちらに?来るなら連絡してくれればよかったのに、門までお迎えに行きましたよ」凪は少し申し訳なさそうな様子で少し顔を赤くさせて言った。「週末は仕事が休みで家にいてもつまらないし、他に友人はいなくて、白山社長は私に気さくに接してくださったから、それで勇気を出して社長とお話ししようとお邪魔したんです」凪は玲に恋心を抱くつもりはない。しかし、玲は確かに凪に対して優しくしてくれた人だった。玲は他の若い女性には氷のように冷たく当たるのに、ただ凪に対してだけは少し優しい態度をとるのだ。今も凪に対して微笑みかけてくれている。凪は玲が笑うと特に素敵だと思った。玲は普段からあまり笑みを他人に見せることはない。きっと彼を追いかける女性たちが多いせいだろう。玲はいつも冷たく、他人を寄せつけない態度を見せている。多くの玲を慕う女性たちはみんなそんな玲の心を溶かし、唯一無二の存在になりたいと思っている。もし、玲がいつも春風のように優しく微笑んでいたら、もっとファンを増やすことになる。きっと玲の服まではぎ取ろうとするような狂った女まで現れてしまうだろう。凪が黛家の令嬢であると発覚して戻って来てから一年。玲に対してそこまで知っていることはないが、ある点についてはよく理解している。玲は今まで多くの女性たちを虜にしてきて、いくら自分を恋い慕う女性が多くいても、彼女たちを受け入れることもないし、みんなを拒絶している。誰に対しても希望を与えることはない。凪はたまに、ここまでハイスぺな男性が結婚相手を選ぶ基準はなんだろうと考えることがある。そして奏汰が玲に告白して、世間の目も気にせず口説き始めてから、目立つような求愛の行動を見せている。それに対して玲は受け入れてはいないが、人を使って奏汰を遠ざけることもしていない。そう、この点が不可解なのだ。まさか玲は本当に男のほうが好みなのだろうか?凪は心の中でとても残念だと思っていた。「今後、黛さんが暇な時にはいつでも連絡してくれて構いませんよ。週末は普通家にいて、外出はあまりしませんので」凪が奏汰のほうへ目を向けると、奏汰は何も気にする様子はなく、
家に帰って、そこに奏汰がいるたびに、親が二人で結託して彼女を丸ごと奏汰に押し付けようとするような感覚を拭いきれない。「行きましょう」奏汰は玲の手を掴んで彼女の手を引き歩いていこうとした。玲は条件反射で彼に触らせないように彼の手を振りほどくと、冷ややかな目で警告した。「結城社長、本当に自重してくれませんか。手を出してこないでくださいよ。両親が味方をしているから、俺が殴りかからないと思わないでくださいよ」奏汰は笑って弁明した。「俺は別に何かしようとしたんじゃなくて、ただ下に連れて行きたかっただけですよ」「俺には足があるし自分で歩けますんで、手を繋がなくていいです」玲はあの花束を奏汰につき返して、冷たい声で言った。「俺は花は好きじゃないと言ったはずです。女が喜ぶようなものは好きじゃありませんので」そう言うと、彼女は奏汰の横を通り過ぎて下におりていった。奏汰は花束を抱きかかえたまま彼女の後に続き、歩きながら話した。「ではどうすれば?俺の任務は本当に大きくて厄介ですよ。玲さん、白山社長、俺たちももうこんなに仲良くなったんですから、ちょっとは助けてくださいよ。俺もあなたの両親の前でできないことをできるって約束してしまったんですから。お二人から任された任務が完遂できないと、俺に対する評価はガタ落ちです。もともと俺には満点をくれていたのに、あなたが助けてくれなければ五十点になってしまって、不合格って言われるじゃないですか」玲は急に足を止め、警戒した様子で尋ねた。「俺の両親が何を言ったんですか?」「茂さんと弥和さんからあなたを女性の道に戻してほしいと言われて、それから周りの女性と同じように結婚して子供を産むように、どうにかしてほしいと。玲さん、ほら、この任務はとても大きくて厄介でしょう?俺もうっかりそんなことは簡単だと子供みたいに思ってしまって、胸を張って任務を引き受けたのです」玲「……」彼女は暫くの間奏汰を睨みつけていてから、尋ねた。「それで、うちの親からその任務とやらを達成できなければ、どうすると言われたんですか?」「茂さんは、俺があなたを女性の道に戻すことができないのであれば、このまま男装させておくと。だから、俺とあなたの結婚式は星城と柏浜に大きな衝撃を与えることになりますよ。前代未聞の二人の大の男がどちらもイケイケの
唯花は少し考えて、姉の話も一理あると思った。唯花は今とても忙しい。自分の事業に加えて理仁に代わって家の私産の管理に、麗華が今やっている結城家の細かな事業を継ぎ、その管理の仕方を学んでいる。結城家の長男の嫁として認められるように、努力しなければならない。それは主に彼女が一般家庭出身だから余計に努力が必要というところもある。もし、内海家が結城家に釣り合うほどの家柄であれば、彼女もここまで苦労し、プレッシャーを感じることはなかったはずだ。そして唯花も伯母が姉を黛家の当主にさせようと考えていることなど知らない。琴ヶ丘のほうは非常に賑やかだった。遠く柏浜の白山邸は賑やかとはいえないが、普段の静かさと比べると今日は賑やかなほうだった。玲と碧の二人は両親に言われて週末の休みに実家に帰ってきた。碧は早くに帰ってきて、奏汰と一緒にグラン・エデンまで玲を迎えに行った。午後四時になると真昼間ほど太陽が強くなく、幾分か光の強さは和らいでいるが、暑いことには変わりない。太陽光は昼間ほど強くなくても、みんなエアコンを手放せない。玲は午後ゆっくりと寝ていようと考えていた。憎き奏汰が彼女の眠りを妨げた。まだ三時だというのに、彼が玲のドアをノックしてきた。玲はそれを無視して相手にしなかった。そして十分ほどあけて、彼はまたドアをノックした。それか電話をかけてきた。どうしても、彼女の邪魔をして起こしたいらしい。そのようなことが一時間続き、玲は眠気が消え失せ、怒りがどんどんつのっていった。玲は昼休みを終わらせ、険しい表情でドアを開けた。そこには奏汰が花束を持って立っていたが、その花は白山邸の庭に咲いている花をそのまま摘んできたらしく、ラッピングはされていなかった。玲がドアを開けたのを見て、奏汰はニコニコと笑った。一方奏汰を見た瞬間玲は彼を蹴り倒して一階まで転げ落としたくなった。自分が寝ないからといって、彼女を起こす必要はないだろう。昨夜、二人はどちらもかなり遅い時間に寝たというのに、彼のほうは元気満々で、彼女のほうは眠くて死にそうだ。「結城社長、礼儀というものを知らないのですか?あなたはうちの客人でしょう。あなたはゲストで、私はホスト側ですけど。ゲストのくせに私の部屋のドアをよくもまぁ、うるさくノックできますよね。おかげでゆっ
「落ち着いた日はそう続かず、また自分の出生に関する件が浮き上がってきたわ。そしてまた長い時間をかけて調べないといけないの。唯花ちゃん、私たちって神様に弄ばれているのかしらね?どうしていつもいつも傷つけられないといけないの」唯花はそれを聞いて詩乃を慰めた。「伯母様、そんなふうに言わないでください。誰だって生まれてから死ぬまで順風満帆な人はいません。必ず挫折を味わうものです。理仁さんに一緒に調査してほしいって頼みました。人が多ければ少しは証拠が見つかるかもしれません」「ええ」詩乃はただ一時的にもやもやして、姪に辛気臭い言葉を吐いてしまったのだ。「お姉さんは来てる?」「さっき到着したところです。お姉ちゃんはここにいますよ。何か伝えたいことがありますか?」詩乃は言った。「電話をかわってもらえるかしら、ちょっと話したいことがあるの」唯花は携帯を姉に渡した。「もしもし、伯母様、お電話かわりました」詩乃は返事をした後、唯月に言った。「唯月さん、最近ちょっと時間をつくれない?」「ええ、大丈夫ですよ。何か話したいことがあるなら、気兼ねなくなんでも言ってください」「じゃ、一週間時間をつくれるかしら?私と一緒にちょっと柏浜まで行って、黛家の当主に会ってもらいたいのよ」詩乃は唯花を連れて行くつもりはない。唯月も忙しくはあるが妹と比べるとそこまでではないと思ったからだ。それに、姫華が言っていた話を考慮し、詩乃はよく考えてみると、娘の話も一理あると思った。前任の黛家当主が次女である妹に殺され、詩乃と彼女の亡くなった妹が前任の実の娘だと証明されたら、詩乃は黛家当主の座を奪還するつもりだ。しかし、詩乃はもう年だから当主になる気はない。自分も娘にはその重責が担える力がないことは、詩乃もよくわかっていた。唯花は現在結城家の長男である理仁の妻だ。処世術に長けていてその責任を負うのに適しているが、今はすでに大きなプレッシャーを負っているのだ。だから、唯月が一番適している。唯月は詩乃の妹の長女である。詩乃はもし、彼女の両親が生きていればきっと唯月を後継者に選んだだろうと思った。それで詩乃は唯月と一緒に柏浜に赴いて、黛一族に会わせようと考えた。「わかりました」唯月は妹から亡くなった母親の出身を聞いていた。母親は十数年前に若
陽が来ると、家の中は賑やかになった。叔母である唯花ですらも陽に近づくことができないくらい陽はみんなに囲まれてしまった。それで唯花は姉を連れて琴ヶ丘の山を散策し美しい景色を楽しんだ。琴ヶ丘は一年四季がはっきりしていて、季節によって違う顔を見せる。春になると、全体が鮮やかな春色に変わり非常に見ごたえがある。夏には蓮の花が咲き、それも違う美しさを見せてくれる。秋には紅葉狩りを楽しめる。冬は雪の季節だが、星城では滅多に雪は降らない。それで雪景色は楽しめないが、雪がなくてもここの景色が綺麗であることに変わりはない。「あの男の様子は?」唯花は姉に俊介の状況について尋ねた。「回復に向かってるみたいよ。今日行った時は目を覚ましたばかりの時よりもだいぶ元気が出てたわ。だけど、ベッドからおりて歩いたりはできない。成瀬莉奈は彼を殺す気で致命傷になるところを狙って刺していたからね。それでも生きているのだから、お医者さんは運がいいって言ってたわ」唯花は少しだけ黙っていてから口を開いた。「あいつが生きているってことは、陽ちゃんは父親を失わずに済んだってことね。どのみちあいつもお姉ちゃんの邪魔になることは今後ないだろうし。たまに陽ちゃんを父親に会わせてあげるくらいでいいと思う」唯月は頷いた。「私があの人と大喧嘩して離婚することになったけど、結局は陽の父親であることに変わりないからね。別に死ねばいいのにとまでは思ってなかったの。あの人たち、週末は陽を病院で過ごさせてくれないかって言ってたけど、陽が嫌がったのよ」唯花は皮肉そうに笑った。「あいつら、以前は陽ちゃんのことをおもちゃみたいに扱ってたくせに。気が向いたら遊んであげて、気分が乗らないと陽ちゃんを見ることもしなかった。陽ちゃんの祖父母だって佐々木英子の子供ばかり可愛がってさ。だから陽ちゃんはあっちの家族とは親しみを持ってないのよ。お姉ちゃんがいないなら、陽ちゃんも病院に残って父親と一緒にいるわけないわ」家族や親戚であっても、親しみの心は育てていく必要がある。祖父母であっても、孫と交流していなかったり、世話をすることがなければ、孫も祖父母に懐くことはない。それは当たり前の事だ。「東社長も一緒に来たの」唯月が言った。唯花は納得した。「それで陽ちゃんを病院にって言ったのね、陽
おばあさんは、姫華は理仁と家柄が釣り合っていても、結城家の女主人には向いていないと言ったことがある。「ホテルでご飯を食べようよ。あなたも接待があるんだし、家まで帰ってたら遠いでしょ」「君の言う通りにしよう」唯花は笑った。彼女と理仁の間には、確かに波乱万丈なはらはらとした展開はなかったが、彼はますます彼女を尊重し、彼女の意思を優先するようになっていた。夫婦二人の生活は平凡で充実しており、甘い雰囲気に満たされていた。理仁はいつもこう言っている。もし来世があるなら、また彼女と一緒になりたいと。今、彼女にも欲が出てきた。もし来世があるなら、また理仁と結婚して夫婦になりたいと思い
隼翔「……」この子は、なんて頑固な子なんだ。「陽」唯月のほうも二人に気づき、近づいてきた。隼翔は心配になり、また陽に母親に言うんじゃないと釘を刺しておいた。しかし、陽はその言葉が聞こえていないかのように、もがいて下にするりと降りると、母親のほうへ駆けて行った。「ママ」唯月は陽が来ると彼の手を繋いで微笑んで尋ねた。「陽、もう遊ばなくていいの?」「いいの、おうちに帰る」「わかったわ、帰りましょうか」唯月は隼翔を見て彼のほうへと近寄っていき、落ち着いた様子で隼翔に礼を言った。「陽の相手をしてくださって、ありがとうございました」「そんなとんでもない。俺は陽君の世
姫華は笑った。「彼は今日すごく忙しいみたい。いつも通り花とラブレターを届けてくれたけど、メッセージは数通しか来てないの。お兄さんの奥さんがそろそろ出産だそうで、手元の仕事を早く片付けてA市に戻らないといけないって」唯花はうなずいた。「遥さんは双子を妊娠してるから、早産になりやすいって聞くわ。六月には生まれるかもしれないって言ってた。もう五月中旬だから、確かにそろそろわね」子供の話になると、姫華は唯花にまだ妊娠の兆候がないかと聞きたくなったが、口に出しかけてやはりやめた。唯花は今仕事に忙しく、気が紛れているから妊娠のことで悩まなくなっただけだ。もしこの話題を出せば、また唯花を
それから、彼は奪い返した宝石の花束を咲の胸に押し戻し、穏やかな声で言った。「咲、君はこれを持ってもう少し座ってて。ご飯はすぐできるから。こいつらは気にしなくていい。俺がいる。天が落ちてきても、俺が支えてやるよ」辰巳はそう言うと、また祐一をにらみつけた。「咲は俺の婚約者だって知らないのか?俺の婚約者に手を出すとは、尾崎家もずいぶんな度胸だな!」この言葉には脅しの色が込められていた。祐一の顔色が一変し、慌てて言った。「結城副社長、誤解です、それは誤解ですよ!お、俺たちは……本当に申し訳ないことをしてしまいました。俺たちは咲とはいとこ同士です。俺の母は彼女の実のおばです。みんな家族の







