当時、白鳥家が没落の道へ進んでしまったのは、その薬品事故のせいだったのだ。その件で会社の株は急落し、父親も警察に捕まり調査を受けることになった。
それがもし、誰かの仕業だったとしたら……
未央は両手を急に強く握りしめ、目の前の悠奈の答えをじいっと待っていた。
悠奈は眉間にきつくしわを寄せて、苦痛に溢れた瞳だった。
「わ……私、思い出せない」
未央は内心とても焦っていたが、悠奈に無理をさせてはいけないことが分かっていたので、優しく言った。「怖くないよ。思い出した時に教えてくれればいいから」
晃一が手首を自ら切って自殺した事件は、悠奈にとってかなりの精神的な打撃だった。それで彼女は自分自身を守るために、無意識に自己防衛反応が働き、あの頃の記憶を封印しているのだ。
「確か女の人の声だった気がする」
悠奈は懸命に記憶を呼び起こそうとしていた。ただ思い出そうとするとすぐに辛くなって、頭に割れるほどの激痛が走った。
「分からない、頭、とっても痛い」
悠奈は苦しみもがき叫んだ。
未央は質問するのを止め、優しい声で彼女をなだめた。
「大丈夫、大丈夫だからね。寝たら少し良くなるわ」
悠奈はゆっくりと目を閉じ、呼吸もだんだん落ち着いてきて、眠りの中に落ちていった。
未央は悠生のほうへ顔を向け、焦った様子で尋ねた。「藤崎さんは晃一君について何かご存じですか?彼のご家族はどちらに?」
当時、薬を誰かが変えたことで長谷川晃一を死に至らしめた。ならば、それを調査しようと思ったら、その少年に関することから情報を手に入れなければ。
この時、悠生は複雑な目つきで、唇をすぼめた。「彼には姉がいて、二人は助け合って生きてきたらしい」
それを聞いて未央の瞳がパッと明るくなった。「そのお姉さんは今どこに?」
「海外にいるんだ」悠生の声はとても低く、まるではるか遠い記憶の中に入り込んでいるようだった。
一瞬、希望の光りが見えたと思ったのに、それはすぐに消えてしまい、彼女は黙ってため息をついた。
しかし、彼女はこの件はかなり昔のことなので、調べようと思ったら、それは当然容易ではないことが分かっていた。
ゆっくりと調べていくしかない。
そして、いつの間にか夜は深くなっていた。
悠生はこの家に数時間滞在し、悠奈の症状が安定してから、胸をなでおろして帰っていった。
それ