「さすがは白鳥社長の娘さんだ。そこまで調べ上げているとは意外でしたな。しかし、ちょっと勘違いなさっているようですぞ」
未央は少し戸惑いを見せた。「どういうことです?」
宏太は葉巻を口にくわえたまま、落ち着いた様子で話し始めた。「当時、白鳥グループを陥れたのは、私ではありませんよ」
「それはどういう意味ですか?」未央は困惑して、思わず口に出した。
「そんなはずないわ!うちがあんな目に遭えば、一番に得をするのは江川薬品なんだから」
宏太は肩をすくめて、どうでもよさそうに言った。「今さら、あなたを騙す必要もないでしょう。それに、本当に大きな利益を受けるのは誰なのか、よく考えてごらんなさい」
未央は眉間にきつくしわを寄せ、焦りを感じた。
「横山社長、はっきりとおっしゃってください」
すると。
宏太は少し機嫌を損ねたらしく、後ろに寄りかかり、片手をソファの背もたれに置いた。
「白鳥さん私ども商売人はなぁ、自分にとってどんな利益が生じるかで、ものを言うもんなんだよ。あんたには私が欲しい物はない、どうしてタダであんたに教えてやる必要がるんだ?」
その瞬間、その場の空気は凍り付いた。
未央は顔を暗くしたが、宏太が言っていることは事実であるとも分かっていた。
「何が欲しいんです?」彼女は声のトーンを低くして尋ねた。
宏太は目を細め、彼女を上から下までじろじろと見つめ、喉の奥のほうから低い笑い声を出した。
「男が外でせっせと働くのは権力、金、女のためでしょう。白鳥さん、あんたが何を私に捧げられるか自分自身に問いかけてみられてはいかがだろうかね?」
未央の心はどんどん重くなった。
権力、金、この二つはこの大企業の社長を前にしてはどうすることもできない。ただ一つ……
この場の空気が緊張で張り詰めた瞬間、個室のドアが突然開かれた。
個室の前にいた二人のボディガードは一体どこへ行ってしまったのか。
「横山社長、俺ではあなたと対等に話し合いができませんかね?」
耳元から聞き慣れた心地よい声が聞こえてきた。
未央が顔を上げると、全身に他人を圧倒するオーラを纏った博人が中へと入ってきた。
宏太は少し驚いたが、そこに来た人間を見てさらに意味深な笑みに変わった。
「これはこれは、西嶋社長ではありませんか。あなたであれば話は別ですよ」
さっきと比べると、宏