ただ悠奈の身体が冷たく、顔は蒼白になり、すでに失血により意識混濁状態になっているのだけが分かった。
悠生はすぐに彼女を抱き上げ、大きな歩幅で下の階へとおりていった。未央は落ちていた悠奈の携帯を拾い、彼の後に続いた。
すぐに二人は病院に到着し、悠奈は救急救命室に運ばれた。
病院の廊下で。
未央は自責と後悔に満ちた顔を下に向けて低い声で言った。
「私のせいです。もし、私がもっと早く悠奈ちゃんの様子がおかしいことに気付いていれば、このようなことにはならなかったのに」
彼女はこの二日間、ずっと白鳥家の調査に忙しかったうえに、最近は悠奈が発作を起こしていなかったので、完全に油断していたのだ。
悠生はそれでも彼女を責めることはなかった。きつく拳を握りしめ、壁を力強く殴った。まるで痛みなど感じていないようだった。
「君のせいじゃないよ。これは兄としての俺の責任だ」
自責の念は未央に劣らず、彼の声は今までになくかすれていた。
しかし……
もうこうなってしまったのだから、彼女の回復を祈るしかない。
悠生は深呼吸をし、無理やり自分を落ち着かせて尋ねた。「さっき、悠奈は還暦祝いの後から様子がおかしかったと言っていたよね?」
未央は頷いた。そして心の中には疑惑も浮かんでいた。
彼女の経験から言って、悠奈は晃一に関することで病気を発症していたのだが……
この時、脳裏にある人物の姿が浮かんだ。
未央は何も考えずにこう言い出した。「待ってください。あのパーティーで滝本絵里香に会いました」
絵里香は晃一の姉だ。彼女が悠奈に何かを言ったのかもしれない。
悠生は突然苦しみの笑みを浮かべた。
「悠奈にはここしばらくは外出しないように伝えていたんだ。あの子が滝本絵里香に会って、昔の記憶をまた掘り起こしてしまうかもしれないと思ったから。まさかあのパーティーで悠奈を傷つけてしまうことになるなんて」
未央は彼が自分を責めているのを見て、心苦しくなり、彼の肩をポンと叩いた。
「藤崎さん、悠奈ちゃんはきっと大丈夫ですよ」
そう言い終わった瞬間、オペ室の明りが消えた。
医者がその中から出てきてマスクを外すと、ゆっくりとこう言った。
「患者さんは命の危険を脱しました。しかし、注意が必要です。これ以上彼女を精神的に刺激しないようにしてください」
悠生と未央はお互いに目を合