悠人はそれを見て、急いでしゃがんで赤い小さなボールを拾おうとしたが、それよりも先に骨ばった手がそのボールを拾い上げ、手の中で弄び始めた。
「この小さなボール、なかなか風変わりだな」声は穏やかで柔らかかった。
悠人は声の方向を見て、その人物を見上げた。話しかけてきた男は眉目秀麗で整った顔立ちをしており、黒と白のオーダーメイドのスーツを着ていたが、その雰囲気は峻介とはまるで正反対だった。
一人は鋭利で冷酷だが、もう一人は柔和で温かい。
彼の眉と目はまるで春の三月の太陽のように、見る者をほっとさせるようだった。
彼は峻介の友人の一人であり、桐原清十郎であった。
彼に近づいたことで、悠人の周りに彼の薬草が混じり合ったような淡い冷たい香りが漂ってきた。
悠人は穏やかに笑い、「手作りのものです。今の機械製品とは違います。ありがとうございます」と言った。
清十郎はその小さなボールを悠人の手のひらに返しながら言った。「若旦那が車の鍵を拾うこともできないほど、この小さなボールは君にとってとても大切なものなんだね」
「大切な友人からの贈り物なので、当然大切にしています。お邪魔してすみません」
悠人は車の鍵を拾い、大きな袋を持ちながら身を引いて道を開けた。
清十郎はそれ以上何も言わず、長い足で軽食店に入っていった。
悠人が去った後、清十郎は携帯電話を取り出し、気だるそうに電話をかけた。
電話がつながると、峻介の苛立った声が聞こえてきた。「何か用か?」
「用もなく電話しちゃいけないのか?まだ君の優子ちゃんを見つけてないのか?」清十郎の声には、どこか茶化すような響きがあった。
「笑い物にしたいなら他の日にしてくれ。今は時間がない」
そう言って峻介が電話を切ろうとしたその時、清十郎は得意げに笑い、「でも、僕はもう見つけたんだよ」と言った。
峻介は電話を切る手を止め、声を高めた。「なんだって!優子ちゃんはどこにいる?」
「さっき少年に会ったんだ。彼の車の鍵から祈りの赤い小さなボールが落ちたんだけど、その編み方が昔君が持っていたものと全く同じだった」
あの頃、峻介は毎日大切に持ち歩いていた赤い小さなボールを思い出した。
「そいつはどこにいる?」
「3分前まではここにいたけど、今はもう行ってしまった」
峻介は怒りで胸が激しく上下した。「清十郎!お前、薬草の