「そうだよ」
「年末は金融業界の人にとって最も忙しい時期ではないの?」
「そうでもあるし、そうでもない」也は唇を少し上げ、意味深に答えた。「結局は人次第だ。大切な人のためなら、どれだけ忙しくても時間を作る。でも、大切じゃない人のためには、どれだけ暇でも構わない」
時也の言葉には深い意味が込められているようだったが、凛はまだその意図を完全には理解できなかった。その時、場内の照明が一瞬変わり、パートナー交換の時間が来たことを知らせた。
幻想的な光の中、人影が一つ凛の方に向かってきた。
パートナーが交代した瞬間、凛は晴香の顔に驚きと信じられない表情が浮かんでいるのをはっきりと見た。
次の瞬間、彼女の手首はしっかりと握られ、男性のもう一方の手が所有欲を示すように彼女の腰に添えられた。
海斗は挑発的な笑みを浮かべ、ほんの一瞬だけ時也の方を見やった後、凛に視線を戻した。その目は一転して優しい光を帯びていた。
「凛、まだ怒ってるの?」
「この前、お前の家に行ってみたけど、誰も出てこなかったんだ」彼は少し不満げに続けた。
「時也が悪意を持ってフライト情報を入れ替えたせいで、今頃やっとお前を見つけることができた」
凛は視線を伏せたまま、何の反応も示さなかった。
「遅くなったから怒ってるの?」
海斗は彼女を見下ろし、声を無意識に優しくして問いかけた。
ちょうどその少し前、スポットライトが照らした時、海斗は一目でその中にいる二人が凛と時也だと気づいたのだ。
二人はダンスフロアに滑り込み、優雅に踊り始めた。
時也の手は彼女の細い腰に軽く添えられ、セクシーで余裕のある笑みを浮かべていた。
二人は時折ささやき、時折目を合わせていた。その光景を見ながら、海斗は何度も怒りを抑えきれそうになかった。
時也は、なぜ凛を抱きしめる資格があるのか?
交際して6年、海斗はまだ一度も凛と社交ダンスを踊ったことがない。
だからこそ、ダンスパートナーを交換する時、彼は迷いなく晴香を放り出し、凛を選んだのだ。
彼は知っていた。今回の凛は本当に怒っていると。だからこそ、彼はできるだけ優しい声で話し、頭を下げて折れ、自分の側に戻ってきてもらおうとしていた。
それは、過去に何度も繰り返してきたことだった。ただ、今回は少しばかり時間と労力が必要なだけだと考えていた。
今でも、海