「違う!」真夕はすぐに否定した。「昨夜、司と一緒じゃなかったよ!」
その否定の声を聞いた司は、心の中で冷たく鼻で笑った。そんなに和也にバレるのが怖いのか。本当に嘘が上手い女だ。
この嘘つき!
和也は司に目を向けた。「司、なんで黙ってるんだ?」
司は気高い顔立ちを崩すことなく、淡々と言った。「彼女がそう言ってるなら、それでいいだろ」
真夕は少し気まずそうに笑った。「司、和也、お二人でゆっくり話してね。私はこれで失礼」
真夕はその場を離れた。
和也は司のそばに寄り、不満げに言った。「君ももっと空気読めよ」
司はわけがわからないというように、目を上げて和也を見た。
「これから俺と真夕が一緒にいるときは、ちゃんと理由つけて席を外してくれ。二人きりの時間を作ってくれよ、分かるだろ?」
司「……」
ここは俺のオフィスなんだけど?俺が邪魔者に?
司は不機嫌な声で返した。「じゃあ、君たちが出て行けよ」
「なんだよ、その態度は。俺は君の一番の親友だぞ。親友が恋に落ちてるなら、協力するのが筋だろ?前は君も、俺が真夕を追いかけるのに賛成してたじゃないか」
司「……」
真夕はまだ法律上に司の妻だし、司はそう簡単に男としてのプライドを捨てられるほど、器の大きい人間でもなかった。
司は唇を開き、気怠そうに言った。「君、恋愛の達人だろ?落とせない女なんているのか?」
「真夕は違うんだ。あの子、純粋すぎる。俺が強引にしたら、怖がらせちゃいそうで」
司の動きが一瞬止まった。純粋だと?
真夕の顔は、手のひらほどの大きさで、まるで天女のように清らかで整った美しい骨格をしていた。しかし、彼の胸に顔を埋め、唇を重ねたのも彼女だった。そして、自らの手を彼の服の中に滑り込ませたのも、また彼女だった。
司は昨夜のことを思い出した。あの痺れるような感覚が再び脊髄から全身へとじわじわ広がっていき、最後には脳内で花火が弾けた。眩く、惑わされ、そして沈んでいくように。
少しでも思い出すだけで、司の心は乱れていった。
ベッドの上の彼女は、まったく純粋じゃなかった。彼女がうまかった。
顔だけでなく、ベッドの上でも男を虜にする術を、彼女は心得ている。
外見は清楚で、中身は妖艶な女を、嫌う男なんているわけがない。
司は、和也の言葉には応じなかった。
その時、清が静かに部屋へ入っ