重苦しい空気が静かに辺りを支配していた。
そのとき、手術室の扉が開き、白衣をまとった医師が姿を現した。
真夕はすぐさま駆け寄った。「先生、彼は……彼の容態はどうなんですか?」
「手術は無事に終わりました。48時間以内には目を覚ますでしょう」
真夕はわずかに息をついた。彼の傷口を見たとき、刃は急所を外れていたし、命に別状はないとは分かっていたが、こうして医師の言葉を聞き、やっと心から安堵できた。
もし和也が自分のせいで本当に命を落としていたら、一生後悔してもしきれなかった。
そのとき、和也がストレッチャーで運び出され、真夕は付き添ってそのままVIP病室へと入っていった。
病室の扉が閉まるまで、彼女は一度も司や彩に視線を向けなかった。
彩は司の袖を引っ張った。「司、彼女って本当にひどいよ!あんなふうにあなたを……私まで打ったなんて、絶対に許せない!」
だが司は自分のの袖を冷たく引き戻した。彼は薄く唇を開き、言った。「……君、打たれて当然だろ」
彩の動きが固まった。
司の目は冷えきった氷のようで、じっと彼女を見据えると、手にしていた写真をバサッと彩の胸元に叩きつけた。「彩……君がこんなに愚かでたちが悪いなんて今まで気づかなかった。今回のことで君にがっかりだ」
「愚かでたちが悪い」と罵られた彩の顔から、一瞬で血の気が引いた。本気で怯えた彼女は、すぐさま司にしがみついた。「司、お願い、信じて!確かに私は真夕が嫌いだけど、でも和也を傷つけるつもりなんてなかったの……こんなことになるなんて思ってもなかったのよ!」
司は彼女を強く突き放した。その美しい額には我慢の限界を超えた苛立ちが浮かび、冷たい声が落ちた。「これが最後だ。俺はいつまでも君の尻拭いをするつもりはない。自分で始末をつけろ」
「司、私……」
「……もう見たくもない。和也も君を歓迎しない。帰れ」
彩はまだ何か言いたげだったが、そのとき清が一歩前に出た。「池本さん、こちらへ」
彩は唇を噛みしめ、拳を握りしめた。今回は完全に自分で墓穴を掘ってしまった。真夕を追い詰めるどころか、司にまで嫌われてしまった。
「池本さん、失礼ですが、どうぞ」清がもう一度促した。
彩は、真っ赤な平手打ちの痕を顔に残したまま、不満と悔しさに満ちた目で踵を返し、病院を後にした。
でも、彼女はまだ自分が負けたとは思