張本社長は真夕を見て一瞬呆然とし、目を輝かせた。「なんだこのべっぴんさんは?まるで天女のようじゃないか」
月は怯えた様子で真夕の後ろに隠れた。「この子は私の同級生です……張本社長、私たちは学生で、そういうことはできません。お願いです、私たちを放してください……」
「学生か、それは素晴らしいな。俺は女子大生が一番好きなんだ」張本社長はよだれが出そうな目で真夕を見つめた。「同級生なら、今夜は二人とも一緒に俺の相手をしてもらおうか」
そう言いながら、彼は黒服の男に命じた。「二人とも連れて行け」
真夕は震える月を守るように庇い、張本社長を冷たい目で睨んだ。「女性を拉致するなんて、これは明らかに犯罪だ!」
「犯罪だって?ハハハッ」張本社長は傲慢に笑った。「この浜島市で俺は顔が利く人物だぞ。浜島市一の富豪、堀田社長と同じテーブルで食事できるような人間に、犯罪だと言うのか?」
浜島市一の富豪である、堀田司。
真夕はここ数日、司と連絡を取っていなかった。司は浜島市で絶大な影響力を持ち、天をも動かす男だった。
「何を突っ立ってんだ!早く彼女ら捕まえろ!」張本社長は待ちきれない様子だった。
黒服の二人が近づいてきた。
月は真夕の腕をしっかりと掴んだ。「真夕、どうしたらいいの?」
護衛が真夕に手をかけようとしたその時、真夕は眉をひそめ、冷たく叱った。「無礼者!」
真夕は張本社長を睨みつけた。「私たちに手を出してみな。あなた、私が何者か知ってる?」
その冷たい気迫に張本社長は一瞬ひるんだ。「じゃあ何者だっていうんだ?」
真夕は一言一言、力を込めて言った。「私は堀田司の妻だ!堀田家の奥様なんだ!」
「なんだって?」
張本社長は目を大きく見開いて驚いた。「堀田家の奥様だと?」
「その通りだ。私たちに一本でも髪の毛を傷つけたら、司が黙ってないわ!」
張本社長は半信半疑だった。その時、背後から声が聞こえてきた。「堀田社長、こちらです」
真夕が顔を上げると、前方から何人もの著名な企業家たちが、ある一人の堂々たる男の姿を囲むようにしてやって来るのが見えた。その人物こそ、司だった。
司が来たのだ!
今夜の司は、完璧に仕立てられた黒のスーツに身を包み、高貴で凛とした雰囲気を纏っていた。歩くたびにその存在感が際立ち、廊下のシャンパンゴールドの灯りが彼の顔をより一層華