急に「嫌い」という一言が発せられ、司は何のことかさっぱり分からなかった。
しかし彼は気にも留めず、スマホを置くと、引き続き書類をチェックし続けた。
仕事を終えた頃には、すでに深夜になっていた。司は立ち上がり、自分のコップに水を注いだ。ふと真夕の方へと目を向けると、彼女はすでに眠っていた。
司はソファへ戻ろうとしたが、その時「ピンッ」という音が響いた。枕元に置かれた真夕のスマホが光り、新しいラインのメッセージが届いたのだ。
無意識に視線をそちらへ向けた司は、次の瞬間、冷たい瞳を細めた。
画面に映った彼女のラインのアイコンが、自分の天才後輩のWのものと、全く同じだったのだ。
司は大股でベッドへと歩み寄り、彼女のスマホを手に取ろうとした。
しかしその瞬間、真夕が寝返りを打ち、彼の手の上に彼女の清楚な顔が乗っかってしまった。
司の動きが一瞬止まった。自分は何をしているのか? さっき見間違えたに違いない。真夕があの天才後輩であるはずがない。
そんなこと、あり得ない。
彼女はただの空っぽ美人なんだから。
その時、司は手のひらに柔らかい感触を覚えた。見ると、夢の中の真夕が、小さな子猫のように彼の手に頬をすり寄せていたのだった。
司の視線は自然と真夕の顔へと落ちた。
枕元の灯りに照らされ、彼女の顔は白く柔らかく輝いていた。さらりと流れる純粋な黒髪が、彼女の首や艶やかな紅い唇の上に散らばっている。その白と黒と紅のコントラストが、彼の目を強く惹きつけた。
時に、女性の美しさは息を呑むほどだ。特に、男を一瞬で魅了するほどに。司は思わず、もう一度彼女を見つめてしまった。
しかし、彼はすぐに手を引き抜き、立ち上がった。
この点に関して彼は自信があった。司はただの美しさに惑わされるわけがない。
色々な美女も見てきた彼が、この程度で陥ることなどあり得ない。
司はソファへ戻り、目を閉じて眠りについた。
翌朝。
真夕が目を覚ますと、司の姿はすでになかった。
時間を見ると――しまった、遅刻する!
今朝九時に司と病院で会う約束をしていた。昨夜の司の険しい表情を思い出すと、もし自分がその場で現れなければどうなるか想像に難くない。
真夕は急いで洗顔と歯磨きを済ませ、飛ぶよ