和也は真夕を捨てるどころか、司の目の前で真夕に告白した。
彩と華は信じられない表情を浮かべた。「常陸さん!」
この男、頭がおかしくなったのか?親友が捨てた女に手を出そうとしているなんて!
司の視線は、繋いでいる真夕と和也の手に落ちた。彼の周囲の空気が瞬時に氷のように冷え込んだ。彼は唇を少し動かし、和也に言った。「もちろん。勝手にしろ」
そう言い終えると、司はその場を去った。
彩はすぐに彼を追いかけた。
真夕は司が去っていく方向を見つめながら、考えを巡らせた。彼の自分への気持ちは、まったくもって冷淡だった。和也が自分を追いかけることを許し、和也がどうするのかさえ「勝手にしろ」と言い放った。
「真夕、俺は司とは長年の付き合いだ。司は彩とは絶対に別れないよ」
真夕はすぐに和也の掌から自分の小さな手を引っ込めた。「それは知ってる」
その時、和也が一歩近づき、真夕を壁際まで追い詰めた。彼はその美しい唇の端を上げ、微笑んだ。「だからさ、俺の彼女にならないか?今後、司があの女をどう甘やかそうと、俺は君を同じぐらい甘やかしてやるよ」
真夕は和也を本気で相手にするつもりはなかった。彼女のまつげが震えた。「常陸さん、お気持ちはありがたいけど、私にはもったいないよ。田舎出身で、学歴も仕事もないし、釣り合わないから……」
そう言って真夕は彼を押しのけ、そのまま走り去った。「常陸さん、さようなら」
和也は真夕の去っていく姿を見て、思わず笑みをこぼした。この子、本当に面白い。
気に入った!
司がバーを出ると、社用車がすでに路肩で待っていた。秘書の清が丁寧に後部座席のドアを開けた。
その時、彩が追いかけてきて、背後から司を抱きしめた。「司、どうしたの?なんでそんなに冷たいの?」
彩は不安で仕方がなかった。司がなぜ彼女にこんな態度を取るのか、理解できなかった。
司は彩の手を振りほどき、無表情で言った。「用事があるから会社へ戻る。君は家に帰って」
司はそのまま後部座席に乗り込んだ。
清は運転席に戻り、車を発進させた。
彩はその場で悔しそうに足を踏み鳴らした。「司!」
社用車の中で、清は低い声で言った。「社長、常陸さんは本当に奥様のことが好きなようですが……」
司はシャツのボタンを一つ外し、繊細な鎖骨を露わにした。そうしな