真夕は彼の名前を何度も呼んでいた。
その美しい声に惹かれ、さっきの若い男も思わず振り返った。
誰もがつい目を向けたくなるような声と顔つきだった。
司はただ険しい顔で部屋へ戻るしかなかった。
真夕はすでにベッドに戻っていた。司は不機嫌そうに彼女を睨みつけた。「しつこく呼んでどうする?幽霊か」
真夕は何も言わなかった。彼女は善意で呼んだのに!
「冷水シャワー浴びてくる」と言いながら、司はシャワールームへ入り、冷水を浴びた。
数分後、彼は出てきて布団をめくり、ベッドに戻った。
二人は無言のまま横になった。隣の部屋からはまだ音がしていた。それに、男女のくすくす笑うような、低く抑えた声だった。小さいながらも、彼らの耳にははっきりと届いた。
司はもう一度冷水を浴びようかと、布団をめくろうとした。
しかしその時、隣にいる真夕が動いた。彼女は最初、ベッドの端に寄って寝ていたのに、突然身体を動かしてきて、細く柔らかな体が彼にぴたりと寄り添った。
香りと柔らかさが一瞬で彼の身を包んだ。
司は一瞬動きを止めた。お互い大人だし、この空気の中で彼女が自分から寄ってくる意味は、言うまでもない。
司は彼女を見下ろしながら低く尋ねた。「どういうつもりだ?」
真夕は潤んだ瞳で彼を見つめて言った。「どう思う?」
司の喉仏が上下にごくりと動いた。その時、突然バイブ音が響いた。彼のスマホが鳴っていた。
画面を見ると、それは彩からの電話だった。
司は通話ボタンを押した。
すると、彩の甘ったるくわがままな声が聞こえた。「司、なんでラインに返事くれないの?」
さっき彼女が幼い頃の写真を送ったのに、彼は返信するのを忘れていたのだった。
「ずっと忙しくて……」
しかし、司の低く魅力的な声がふいに途切れた。
なぜなら、真夕が彼に抱きつき、彼の喉仏に唇を落としたからだ。
司の体が一瞬で強張り、細長い目尻が一気に赤く染まった。
彼は手を伸ばし、彼女の華奢な肩をつかみ、やめるように制した。
通話中にそんなことをするなんて。明らかにわざとだった。
彼女はわざとだ。
いつも彩の電話で彼がその場を離れてしまうから、今回は、彼女は彼の我慢強さを試しているのだ。
真夕の赤い唇は彼の喉元を這い、鋭く立体的なラインをなぞった。その形は彼の端正で気高い顔立ちにそっくりで、どこまでも惹