ミニ引っ越しサービスの運転手は、奈津美の荷物を運び上げてから帰っていった。
2LDKで、30坪にも満たない小さなマンションだが、一人暮らしには十分な広さだ。
しかし......
奈津美はこのマンションの間取りと広さを見て、思わずため息をついた。
涼のような社長にしては、ずいぶんケチだ。
奈津美はすべてを準備し終えると、ベッドに倒れ込んだ。今の体では、少し動いただけでも傷に響く。
腕だけでなく、足の骨も損傷しているため、医師からは1ヶ月間は安静にするように言われている。
1ヶ月後からリハビリを開始する予定だ。
しかし......
奈津美はスマホのカレンダーを見て、あと10日で試験があることに気づいた。
前世、彼女は高校時代は確かに成績優秀な優等生だった。だから卒業後、すぐに神崎経済大学に進学できたのだ。
しかしその後、彼女は涼のことばかり考えていたので、大学の授業はほとんど真面目に受けていなかった。
確かに黒川グループで経営層の知識をたくさん学んではいるが。
しかし、大学の試験で、いきなり会社の経営をしろと、大勢の人をまとめて指示することはないだろう。
奈津美は頭を抱えた。
勉強しておけばよかったと後悔しても、もう遅い。
たとえ生まれ変わってから毎日図書館に浸っていても、大学時代の知識なんて、もうほとんど忘れてしまっている。
何とかして試験に合格し、卒業証書を手に入れることを考えないといけないようだ。
翌日。
奈津美はボロボロの体で大学の図書館へ行った。
月子はボロボロにされた奈津美を見て、驚いたように言った。「奈津美、前からそんなに勉強熱心だったっけ? こんな状態なのに、よく図書館に来れたわね!」
「見ての通り、最近勉強が好きになったの」
奈津美は試験に出そうな箇所に目を通していた。
大学の知識は膨大で、合格点を取るのは至難の業だ。
月子は言った。「一人で頑張ればいいじゃない! 何で私を呼ぶのよ? 巻き込まないでよ」
月子はもともと遊び人で、神崎経済大学に通っているのは卒業証書のためだけだ。
奈津美は月子に何か教えてもらえるとは思っていなかったので、頬杖をついて言った。「仕方ないでしょ、授業についていけなくなっちゃったの。卒業できなかったら、何のために大学に通ってたのか分からないわ」
「確かにね。前は涼っていうコ