綾乃が無事卒業だと聞いて、奈津美は自分の耳を疑った。「白石さんが卒業?どうしてそんなことに?カンニングを主導した張本人なのに、どうして無罪放免なの?」
「これは監察委員会の決定だ。校長先生はすでに解任され、調査を受けている。近いうちに新しい校長先生が就任する。これが精一杯の結果だ」
「涼さんのせい?」
奈津美は疑問を口にした。
しかしすぐに、自嘲気味に笑った。
そんなこと、聞くまでもない。
この神崎市で、涼以外に誰がこんなことができるだろうか?
礼二がゆっくりと言った。「お前はよくやった。相手が悪かったということだ。それは認めざるを得ない」
礼二の言葉を聞いて、奈津美は彼を見上げた。
「何を見ている?」
礼二が眉をひそめた。
「望月先生は自分の力が涼さんに及ばないと言っているの?」
「俺はお前の後ろ盾だとは一度も言っていない」
「でも今は、私たち運命共同体でしょ。涼さんは、あなたが何度も私を助けてくれたのを見ている。彼は今、あなたが私に惚れていて、私があなたの次のターゲットだって思ってる。もしあなたが私を助けなかったら、望月先生が涼さんを恐れているって噂が広まって、あなたの名前に傷がつくわよ」
奈津美ははっきりとそう言った。
礼二は片眉を上げて言った。「挑発なんて俺には意味がない。相手を間違えているよ」
「礼二!」
礼二が立ち去ろうとするのを見て、奈津美はすぐに彼の前に立ちはだかって言った。「本当に私を助けないつもり?私はあなたの大事なスーザンよ」
奈津美が諦めないのを見て、礼二は腕を組んで言った。「そこまでして彼女を追い詰めたいのか?」
「私が彼女を追い詰めたいんじゃなくて、彼女が私を追い詰めたのよ。私は、やられたらやり返す主義なの。彼女が私の答えをカンニングして、破棄したんだから」
「どうしようもないだろう?結果は出てしまったんだ。俺に監察委員会に掛け合えと言うのか?講師の俺にそんな力があるとは思えないが」
「礼二、私を騙せると思わないで。あなたがわざわざこの話をしに来たってことは、何か方法があるんでしょ?言って。代償は何?払うから」
奈津美は、礼二が綾乃を罰する方法を知っているに違いないと確信していた。
礼二はただ軽く眉を上げて笑い、こう言った。「方法ならあるよ。ただ、俺を動かすための代償については......今は