日が暮れ始めた頃。
侑子と安奈は夕食を済ませていた。
侑子はあまり食欲がなかったが、安奈はというとしっかり食べて、お腹をぷっくり膨らませたままソファに移動してスマホをいじりはじめた。食器を片付ける気はまったくないようだった。
侑子はため息まじりに首を振り、食器をすべて片づけてきれいに洗い終えた。
「安奈、私もう部屋戻るね。あんたも早く寝なさいよ」
「わかってるってー」安奈はスマホから目を離さず、ノベルを読み続けていた。
侑子は部屋に戻るとスマホを取り出し、我慢できずに修へメッセージを送った。
【修、今なにしてるの?元気......?】
数分後、修から返信が届いた。
【元気だよ。そっちは?】
【私も元気。何かあったらいつでも連絡してね】
【うん、わかった】という短い返事のあと、侑子はさらに何かを送りたかったが、うっかりしつこいと思われたくなくて、小さなスタンプをひとつだけ送った。
十数分が経ち、ようやく返事が届いた。
【侑子、前にばあさんのところで言ったこと、今でも本気だ。お前にはもっといい男がいるはずだ】
その言葉に、侑子の手が震えた。
唇を噛みしめて、必死に平静を装ったまま、スマホを横に投げる。
返信はしなかった。
―見なかったことにする。
修が自分を振り落とそうとしているなんて、許せなかった。
気がつけば一時間以上ぼんやりと時間が過ぎ、侑子はようやく浴室へ行ってシャワーを浴びたあと、ベッドへもぐり込んだ。
だが心はざわついて、怒りも収まらず、寝つけないまま時間だけが過ぎていく。
深夜零時が近づいた頃、リビングから怒鳴り声が響いて、侑子の目がぱちりと開いた。
また安奈が、何かに怒っていた。
布団を頭までかぶって音を遮ろうとしたが、安奈の声は壁を貫通する勢いで、眠りを妨げた。
我慢できず、侑子は布団を跳ねのけてベッドを下り、リビングへ出た。
怒りを抑えながら言った。
「安奈、まだ起きてたの?」
もう夜中の十二時だというのに、安奈はスマホを持ってノベルを読んでいた。
「眠れないんだよ、ったく......マジでムカつく!あの作者、ほんと何考えてんの!?気持ち悪いったらありゃしない、自分が何書いてるかも分かってねーし!クソだよ、あんなの!私が書いた方がマシ!」
侑子は安奈のそばに立ち、スマホの画面を覗き込んだ。表示