「文句言うのは私の自由でしょ!?現実がうまくいかないんだから、ネットぐらいで発散させてよ!」安奈は開き直ったように叫んだ。
「だったら当然、あんたも叩かれるよ」侑子の声にはもう我慢の限界が滲んでいた。「私、そういうの興味ないの。あのばあさんのことで頭がいっぱいなのに、あんたはどうでもいい話ばっかり。少しは空気読みなさいよ。こんな状況で、よくもまあ平然としてられるね!」
大事な問題が起きているっていうのに、安奈は空想の小説に執着している。そんなもの、作者の妄想で書かれた話だ。フィクションを現実とごっちゃにして、わざわざ作者まで叩くなんて、本当に救いようがない。
バカはバカなりに、もっと状況ってものを見て動けよ。現実と物語の区別すらつかないのか。
「類は友を呼ぶ」とはよく言ったもので、安奈のまわりには同じようなレベルの人間しかいない。どいつもこいつも、下品で思慮が浅くて、見る目のなさを堂々と晒している。
見る側の品がなければ、どんな作品も品がなく見える。
頭の中が汚れてるから、何を見ても汚く感じるんだ。
文句を言いながらも、やめることができない。まるで依存症だ。
侑子は心の底で願った。
―今すぐ消えてくれればいいのに。こんなバカ、うっかり口を滑らせて全部ぶちまけかねない。
今は安奈と一時的に手を組んでるけど、いずれ切り捨てるつもりだった。こんなくだらない人間に、これ以上時間を使う気なんてない。
そんな侑子の苛立ちに気づいたのか、安奈がぽつりと言った。
「でもさ、あのババアもう死んだんでしょ?」
火葬まで済んでるってのに、何をそんなに必死になってるのか、安奈には理解できなかった。
「そうよ、死んだ。でも、それで終わったと思ってんの?葬式での若子の顔、見てなかったの?あいつ、もう気づいてる。私たちを疑ってるのよ。なのにあんたは、葬式終わってすぐに男とバカ騒ぎして―もし私がかばってなかったら、今ごろあんた警察の中よ?あんたが偉そうに言ってる『節度』って、それのこと?あんたの私生活、めちゃくちゃじゃない。いい加減にして。無駄なことに時間使ってる場合じゃないでしょ」
安奈が外で何をしようと、ネットで何を言おうと、それ自体は侑子にとってどうでもよかった。
けれど、ああいうタイプは必ず自分に火の粉を浴びせてくる。そういう予感があった。
―このままじゃ