時が経つのは早いもので、あっという間に半月が過ぎた。
若子は少し心に問題を抱えていたが、医師の治療に協力しつつ、薬は一切飲んでいなかった。
もともと担当していた医者は薬を処方しようとしたが、若子はすぐに医者を変えた。重い精神疾患でもないのに、安易に薬を出す医者には疑問しかなかったのだ。副作用の強い薬を、とにかく処方するような医者なんて、庸医としか思えなかった。
新しく担当になったのは女性の医者だった。彼女は薬を出す代わりに、丁寧なカウンセリングを行ってくれて、若子の状態は徐々に落ち着いていった。その医者は、若子の問題は一時的な落ち込みや不安であり、薬を必要とするほどのうつ病ではないと説明してくれた。
自宅に戻ってからは、千景がそばにいてくれて、精神的な支えにもなった。若子の心は、日に日に癒されていった。
「若子、おむつ替えたし、ミルクもあげたよ。洗濯も全部済ませたし、今夜は何食べたい?」
「......」
「どうした?ぼーっとして」
千景がそう言って笑う。
若子は思わず固まった。まさか、千景がここまで全部やってくれるとは思わなかったのだ。彼は今、完全に手持ち無沙汰になっている。
「夕飯は私が作るよ。今日もいっぱい動いてくれたし」
「いいよ、ゆっくりしてて。俺が作るから」
千景は、彼女のために何かをするのが好きだった。少しでも長く眠ってもらえるなら、それだけで満足だった。
きっと、それが本当に誰かを大切に思うってことなのだろう。
気づけば、彼女を喜ばせようとする自分がいて、それが自然と嬉しくなってくる。
「冴島さん、この数日、本当にありがとう。あなたがいてくれなかったら、きっと......」
「俺がいなくても、君ならちゃんとやれてたよ。俺はちょっと手伝っただけ」
千景の言葉に、若子は一瞬言葉を失った。彼の言葉は、どうしていつもこんなに温かいんだろう。
「今夜はね、角煮作るよ。ちゃんと勉強してきたんだ」
そう言いながら、千景はキッチンへと向かい、冷蔵庫から今日買ったばかりの豚肉を取り出す。
若子はその姿を見て、それ以上何も言わず、ただ黙って微笑んだ。
若子は部屋に戻り、暁の揺りかごのそばへと歩み寄った。
そのとき、枕元のスマートフォンが小さく震えた。
彼女はそれを手に取って通話を繋ぐ。
「もしもし、調査の方はどう?」
若