光莉はスマホの画面に映る着信表示を見て、心臓が跳ね上がった。
すぐに手を伸ばし、スマホを奪おうとする。
だが、高峯はそれを軽々と持ち上げた。
「お前の旦那からだ。出るか?」
「返して」
光莉は真剣な眼差しで彼を睨みつける。
しかし、高峯は鼻で笑い、不敵な笑みを浮かべた。
「出たいのか?じゃあ、俺が出てやるよ」
「やめて!」
光莉が止めようとするよりも早く、高峯は指を滑らせ、通話を繋げた。
さらに、スピーカーモードにしてしまう。
光莉の顔が一気に青ざめた。
すぐにスマホから曜の声が響く。
「......もしもし、光莉?もう寝た?」
光莉の体が小さく震えた。
怒りを込めた視線で高峯を睨みつける。
しかし、彼は得意げな表情を崩さないまま、スマホを枕元に置くと、ゆっくりと彼女に覆いかぶさる。
わざと、曜に聞こえるように仕向けるつもりなのか。
光莉はぎゅっと目を閉じ、力を込めて高峯を押しのけた。
その頃、スマホの向こうでは、曜が不安げに問いかける。
「光莉?聞こえてる?電波が悪いのか?......光莉?」
高峯の顔がさらに近づいてくる。
光莉は彼の頭を押し返し、必死に言葉を絞り出した。
「......聞こえてる。もう寝るところだったけど、何か用?」
曜の声は、どこか安心したような、それでいて寂しげな響きを帯びていた。
「......そうか。いや、ただ......ちょっと声が聞きたくなって」
光莉が言葉を返す間もなく、高峯が再び唇を寄せてくる。
彼女は反射的に手で彼の口を塞いだ。
だが、それすらも彼にとっては遊びの一部に過ぎなかったらしい。
高峯はわざと小さく笑い、その声がスマホのスピーカーから漏れる。
曜の声が、一瞬止まる。
そして、疑わしげな口調で問いかける。
「光莉......誰かいるのか?」
光莉は再び彼の口を塞ぎながら、冷静を装い、即座に言った。
「......映画を見てるの。何か用?用がないなら、もう寝るから」
高峯は彼女の手を引き剥がし、その両腕を枕の横に押さえつける。
そのまま、また唇を寄せようとする。
光莉は必死に耐え、曜にバレないよう、必死に声を抑えた。
曜の声は、どこか寂しげだった。
「......何を