光莉はじっと花を見つめた。
何も言わず、ただ静かに―
花は彼女を一方的に非難し、何も知らずに罵っている。
以前の光莉なら、すぐに言い返していただろう。
けれど、今はそんな気力すら湧かなかった。
光莉が沈黙を続けていると、花は苛立ち、眉をひそめる。
「なぜ黙っているのですか?何か後ろめたいことがあるのですか?図星を突かれたから?」
「お嬢ちゃん」
光莉は落ち着いた口調で答えた。
「ここで私を待ち伏せしていたということは、私のことを調べたのでしょう?......なら、なぜ私があなたの父と関係を持つことになったのか、考えたことはあるか?」
「考える必要なんてありません」
花の声が怒りに震える。
「あなたが父を誘惑したからでしょう!?もういい歳なのに、恥を知るべきでは?」
光莉はふっと笑った。
「私の歳が問題なの?それなら、若ければ誘惑してもいいの?歳をとったらダメなの?」
「話をすり替えないでください!」
花は語気を強める。
「どう言い訳しても、あなたが父を誘惑したのは事実です。あなたのせいで、私の両親は離婚したんですよ?......あなたはただの不倫女です!」
彼女は吐き捨てるように言った。
「しかも、あなたには夫もいて、息子もいる。それなのに、どうしてこんなことを?お金に困っているわけでもないのに、何が目的ですか?......スリルが欲しかったのですか?」
花の非難が続く中、光莉は相変わらず静かに彼女を見ていた。
無言のまま、ただじっと。
それが花をさらに苛立たせた。
「......もしかして」
花の目が鋭く細められる。
「兄への復讐ですか?」
その言葉に、光莉の表情が一瞬だけ動いた。
花はそれを見逃さなかった。
「そうでしょう?」
彼女は確信したように言う。
「兄があなたの息子の妻を娶ったことが気に入らないから、父と関係を持ったんですよね?そのせいで、こんな恥知らずな真似を......!」
花の怒りは収まらず、なおも続ける。
「あなたもあなたの夫も、それなりの地位のある人でしょう?こんなことが世間に知れたら、どうなるか考えたことはありますか?」
「なら、あんたも黙っておいたほうがいいわ」
光莉は花に一歩近づき、低い声で囁くように言っ