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Home / 恋愛 / 夫の元カノが帰国!妊娠隠して離婚を決意した私 / 第913話

第913話

Author: 夜月 アヤメ
電話を切った後、若子は改めてこの家の中を見渡した。

この家は二階建ての一軒家で、外から見るとガラス越しに中の様子はまったく見えない。

だけど、中からは外がはっきりと見えるようになっている。

試しにガラスをコンコンと叩いてみると、普通のものとは違う感触がした。

アメリカの住宅は、窓が大きくて簡単に割れそうな家も多くて、なんだか無防備に思えることがある。

もちろん、アメリカでは私有財産の保護が厳しく、不法侵入は重罪だ。

それでも、思い切ったことをするやつがいないとは限らない。

だけど、この家は違う。

どうやら特別な設計がされているようで、ガラスの手触りが独特だった。

透明なのに、普通のガラスとは違う強度を感じる。

もしかすると―銃弾すら通らない防弾ガラスかもしれない。

家の内装はすっきりしていて、ミニマルなデザイン。

清潔感もあって、余計な装飾がほとんどない。

......そう思ったのも束の間。

ふとキッチンのシンクに目をやると、洗われていない皿が二枚。

たったそれだけのことなのに、さっきまでの整然とした印象が一気に崩れた。

気になって仕方ない。

若子はため息をついて、袖をまくると、さっさと皿を洗い、乾燥ラックに並べた。

ついでに冷蔵庫を開けてみると、中には水とビール、そしてシワシワになった果物がいくつか。

......これ、いつのだろう?

この人、普段何を食べてるの?

リビングをひと通り見回すと、ソファのそばに、血のついたハンカチが落ちていた。

若子は拾い上げる。

これは―さっき、彼の傷を押さえるのに使ったものだ。

重傷を負った体で、わざわざこれを拾ったってこと?

なんでそこまでして......

首を傾げながら、ハンカチを持って洗面所へ向かう。

冷たい水で丁寧に血を洗い流し、ラックにかけて乾かした。

その時だった。

「......う......っ」

寝室から微かな声が聞こえる。

若子はすぐに部屋へ駆け込んだ。

ベッドの上では、ヴィンセントが苦しそうに身をよじらせ、うなされている。

額には汗が滲み、眉間には深い皺。

「痛いの......?それとも悪夢......?」

どちらにしても、相当辛そうだった。

若子はそっと耳を澄ます。

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