朝の柔らかな陽光が窓を通して部屋に差し込み、やさしくヴィンセントの蒼白な顔に降り注いでいた。
彼は昏睡から目を覚まし、ゆっくりと目を開ける。意識が少しずつ戻ってくる。
顔を横に向けると、若子が椅子に座っていた。華奢な体を小さく丸め、眠っている。
一晩中、彼のそばにいてくれたらしい。鼻先がほんのり赤く、朝の光に包まれて、まるで夢の中の景色のようだった。
ヴィンセントは何か声をかけようと口を開いたが、そのまま言葉を飲み込む。
彼女の長い髪が肩に落ち、黒い羽のようにふわりと揺れる。陽の光がその肌を優しく撫で、まるで金色のヴェールが彼女を包んでいるかのようだった。
眉間に少しだけ皺を寄せていて、何か困った夢でも見ているのかもしれない。睫毛の隙間からこぼれる光が、小さな光の粒になってキラキラと輝いていた。
......そういえば、昨夜意識を失う前に、彼女の名前を聞いた。
松本若子。
その名前にも「松」という文字が入っていた。
彼はゆっくりと体を起こし、背をベッドヘッドに預けながら自分の体を見下ろす。
傷口のまわりは綺麗に拭かれ、血も乾いていた。
......彼女がやってくれたのか。
この女、意外と優しい。いや―相当、優しい。
「松本」
その声に、彼女がぱちりと目を開けた。
ヴィンセントが起き上がっているのを見て、彼女の目がぱっと見開かれる。
「起きたの?体の具合は......大丈夫?」
彼が目を覚まさないかもしれないと思っていたから、こうして意識が戻っただけでも嬉しかった。
ずっと彼のそばにいた。時々息を確かめながら、夜が明けるまで椅子に身を預け、ほんの少しだけうたた寝していたのだ。
「君、ずっとここに?」
ヴィンセントの視線が、彼女の疲れた顔に向けられる。徹夜したのは一目瞭然だった。
若子は小さく笑って肩をすくめる。
「無事なら、それでいいの」
「隣の部屋、空いてる。ちょっと寝てこい」
「ううん、大丈夫。私......」
そう言いかけたところで、大きなあくびが出てしまい、とっさに口元を手で覆う。頬が赤くなり、気まずそうに視線を逸らした。
ヴィンセントは淡々と口を開く。
「松本、無理するな。眠いなら寝ろ。変な意地張ってどうすんだ。疲れるだけだろ」
そのストレート