慎一は頭を振り、私に背を向けて歩き出した。
私は必死に立ち上がり、その背中に向かって叫んだ。「警察にちゃんと事情を聞いてもらうわ。そして私があの男とは無関係だと証明する。そしたら、あなたに謝罪してもらうわ!」
慎一は振り返り、「自分が何をしてるか、一番よく分かってるのはお前自身だ。俺はあの男を殺人未遂で訴えるつもりだ。そして、お前がどんなに計画を巡らせたか、全部暴いてやる。雲香のために復讐する」
彼は怒っている様子もなく、穏やかな口調に戻っていた。
「佳奈、お前のキャリアはまだ始まったばかりだ。それなのに、これから人命に関わるようなことが起きて、心安らかに弁護士を続けられるか?」
慎一の言葉はまるで呪文のように、私の体中の血液を凍りつかせた。
彼は冷たく言い放った。「楽しみにしていろ」
私はこんな理不尽な濡れ衣を受け入れられなかった。自分のキャリアに汚点を残すわけにはいかないし、人命に関わる罪を無実の私が背負うことなんて絶対にできない!
世間では「自証」に入ったら負けだって言われてるけど、このままじゃ、私は生きていくことすら難しくなる。
自分を守るために、あのホームレスに早く会わなきゃ。なぜ彼が突然私を襲ったのかを知るために。
――
翌日、私は霍田家の運転手に連絡し、あのホームレスが拘留されてる警察署まで送ってもらった。
拘置所に送られる前に彼に会いたかったが、警察に面会を拒否された。
仕方なく、霍田家の妻だと名乗って、ようやく署長に会えた。
署長は体格は大きいけど、動きがすごく速かった。私を見るやいなや、素早く足を動かし、笑顔で手を差し出してきた。「霍田夫人が来られるなんて、お迎えもせずに失礼しました。うちの若い警官たちがあなたを知らなかったんでしょう。どうか気にしないでください」
さっきまで「公務を妨害するな」って怒ってた警官たちは、今じゃ鶉みたいに縮こまってた。
私は心中焦っていたが、表面上は冷静を保った。「お名前は?」
私はゆっくりと彼に手を差し出した。
「前田と申します」
私たちは軽く握手を交わし、早速本題に入った。「前田署長、昨日私たちの家族でちょっとした事故があって、容疑者に会わせてもらえませんか?」
「それは......」
前田署長の笑顔は一瞬で曇り、少し困った顔になった。
「霍田夫人、こんなことでここに来