「コホン、彼はそう主張しているが、まだ徹底的な調査が必要だ。まあ、どうせ食うのにも困っているし、着るものもないようなホームレスだから、いつも物乞いばかりしていて、どう見ても反社会的で、精神的にも不安定な感じがするな」
前田署長が言った。
私はうなずいた。「彼に関する資料を送ってもらえますか?」
前田署長は微笑みながら断った。「それはどうかな?霍田社長に聞いてみたらどうだ?彼のほうが情報を持ってると思うよ」
彼の口からはもう何も引き出せないと悟った私は、それ以上は何も言わず、その場を後にした。
帰り際、前田署長は私を玄関まで送ってくれた。私は振り返りながら尋ねた。
「留置所はどこに移送されるんですか?」
「南郊第一留置所だよ」
「あそこの所長とはお知り合いですか?その時はぜひご紹介いただければ助かります」
「もちろん、もちろん、いつでも電話をくれれば対応するよ」
彼は名刺を両手で差し出し、さらにドアを閉めてくれた。
どうやら早く私を送り出したかったらしい。とにかく彼の手元ではなく、どの留置所でも私が容疑者に会わなければ、それで満足なのだろう。
「奥様、次はどちらへ?」
運転手が私に顔を向けて尋ねた。
私はすぐには答えず、慎一に電話をかけた。
しばらくしてから、電話が繋がった。相変わらずの冷たい声が聞こえる。
「何の用だ?」
「慎一、昨日のホームレスに会いたいんだけど、何とかしてくれない?」
この件の主導権を彼一人に握らせるわけにはいかない。希望が薄いことはわかっていたが、彼に頼るのが最も早い解決方法だった。私は基本的に遠回りも嫌いだし、損もしたくないタイプだ。
電話の向こうで彼はしばらく黙り込んだ。そして数秒後、冷淡に言った。
「証言を改ざんするつもりか?安心しろ、もし彼があなたのことを供述したら、俺はすぐに警察に連絡してあなたを呼び出させるさ」
......
彼の口は相変わらず毒舌だ。私は我慢の限界で怒鳴った。
「慎一、あんた頭おかしいんじゃないの!?」
私は怒りにまかせて電話を切り、運転手に向かって言った。
「誠和法律事務所までお願い!」
どうやら慎一は私を黒幕と決めつけているらしい。
どうしてそんなに確信を持てるの?
彼の中で私はそんな卑劣な人間だと思われているのだろうか?
悔しさで胸が痛くなり、ますます