大学時代、私は法律事務所でインターンをしていたことがあった。その時はひたすら案件の整理やアーカイブ作業を任されて、頭がおかしくなりそうだったのを思い出す。
でも、夜之介が私にくれたのは、そんなレベルのものではなく、重要な機密資料だった。私は驚きと感謝でいっぱいだった。
私は少しの間ためらいながらも、やはり資料を彼に返すことにした。
昨日のホームレスの件を経て、私は彼と率直に向き合うべきだと思った。ホームレスの取り調べ中、慎一が私に不利になることを考えない限り、私はすぐにでも訴えられかねない。そして、もしそれが広がれば、穎子に迷惑がかかる。
康平や夜之介が事務所を守り抜ける力があるのはわかっているが、彼らが巻き込まれてしまう可能性が少しでもあるなら、私は迷わず穎子を守りたい。
彼女の家は高学歴の知識人家庭だが、普通の人には立派でも、この資本のゲームの中ではまったく通用しない。これは彼女の大切な生計手段なのだ。
私は夜之介をがっかりさせたくはなかったが、「すみません、夜之介先生、私はまだ仕事に戻れません」
私は資料をそのまま押し戻し、平静を装って答えた。
彼の瞳に一瞬の驚きが見えた。私がこの仕事のためにあれだけ努力していたことを彼は知っていたのだろう。
だが、人生とはいつも予想外の出来事で溢れている。誰にも明日がどうなるかなんてわからない。
「そうか」
夜之介はそれ以上感情を表に出さなかった。彼は立ち上がり、水を一杯汲んで私に手渡した。
「理由を聞いてもいいか?」
彼の仕草は、まるで依頼者が弁護士に相談する前のようで、私は全身が警戒態勢に入った。
唇を結んで、私は慎重に話すことを避けた。彼とはまだ顔を合わせたばかりなのだ。彼に頼るつもりもないし、信頼できる間柄でもない。
「すぐに解決しますから」
彼は残念そうにため息をついた。
「どれくらいすぐだ?もう5年目になるぞ、あなたの空白期間は」
私はもう黙るしかなかった。弁護士という職業は、どんな小さな言葉でも察知して推測する能力が鋭いからだ。余計なことを言わない方がいい。
彼は、私が話す気がないと察したのか、それ以上は追及してこなかった。「分かった。あなたのポジションはとりあえず保留にしておくよ」
本当に感謝しかない。もちろん、これには康平が関係していることは間違いないけれど。
「行