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Home / 家族もの / 室外機の孤影、涙の子守歌 / 第21話

第21話

Author: 鈴木葵影
私は無理やりハンバーガーを弟に押し付けた。

「食べなさい。もし怒られたら、逆に言い返しな」

「え?でも、僕、怖いよ......」

私はハンバーガーを一口大きくかじりながら、あごで答えた。

「怖がることないよ。これからは、誰にも私たちをいじめさせないから。お父さんとお母さんだって、もう関係ない!」

須恵ちゃんのおかげで、賠償金はすぐに口座に振り込まれた。彼女は私名義の口座を開設し、8000万は定期預金として預けられ、残りのお金は私と弟の生活費として使うことにした。

彼女は言った。

「絶対に、このお金があることを彼らには言わないでね。わかった?」

私は頷いた。このお金は、私たちの未来のための保障だから、誰にも取られたくない。

でも、すぐに母はそれを知った。結局、このお金は、母が自分が死んだ後、父に残すつもりでいたからだ。

母が何度尋ねても、私はただ知らないふりをするしかなかった。

「お母さん、何のお金のこと?もしかして、事故で頭がおかしくなっちゃったの?」

母は怒り狂い、保険会社に電話して罵りまくったが、結局、保険員にブロックされてしまった。

母は仕方なく、私に保険会社に行って騒いでこいと言ってきた。

でも、どうしても私は行けなかった。お金は、何もせずとも私の口座にきちんと入っているから。

治療費を除けば、まだ十分に残っていた。

事故から一ヶ月後、ようやく父は目を覚ました。

しかし、父は本当におかしくなってしまっていて、言葉がうまく出ず、便意や尿意さえも自分でコントロールできなくなっていた。

母はとても悲しみ、父を抱きしめて言った。

「見て、結局私だけが愛してるんだから。外のあの女たちは、もうとっくに逃げたわよね!」

父は「ああ、うう」としか言えなかった。何を言っているのかは全く分からなかった。

でも私は、母が思っているほど父が感動しているわけではないと感じた。むしろ、眉をひそめ、嫌そうにしているように見えた。
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