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Home / 家族もの / 室外機の孤影、涙の子守歌 / 第7話

第7話

Author: 鈴木葵影
医者は言った。早く来て良かった、弟はすでに高熱で痙攣を起こしていた。もしもっと遅かったら、本当に命に関わるところだったと。

私は病院の椅子に座りながら、隣の姉さんにお礼を言った。

「姉さん、治療費は後で絶対返します」

隣の姉さんは私の顔を指差して言った。

「鏡見なよ、顔に傷ができてるよ」

彼女が小さな鏡を差し出してくれた。鏡を見ると、顔に血がにじんでいた。多分、母にビンタされたときに、爪で引っかかれたんだ。

でも、私は全然痛みを感じなかった。姉さんが言うまで気づかなかった。

私は首を振って、傷を治療しに行くことはなかった。

どうせ血はもう止まっているし、治療にお金をかけたくなかった。

姉さんは無理に行かせることもなく、代わりにガムを渡してくれた。

彼女はガムを噛みながら言った。

「親以外に頼れる家族はいるのか?」

私は少し考えた後、首を振った。最初はおじいちゃんとおばあちゃんが面倒を見てくれていたけど、もう亡くなった。今は、父親と母親だけだ。

姉さんは黙っていて、私の肩をポンと叩きながら言った。

「困ったことがあったら、いつでもうちにおいで。私は水原須恵、覚えておけ」

「ありがとう、須恵お姉さん」

「お姉さんなんて呼ばないで、年寄りみたいじゃない?須恵ちゃんって呼んでくれ」

私は頷いて言った。

「須恵ちゃん」

お姉さんは笑って、私の頭を撫でてくれた。

「別に、私は善人ってわけじゃないからな。お前、借りがあるから助けたんだぞ、わかってる?」

私は力強く頷いた。誰が私に優しくしてくれたか、ちゃんと分かっている。人が良いか悪いかは、言葉ではなく行動でわかるものだ。
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