-㉜楽しみの最中-
光が5人に加わり、楽しく呑んでいると裏通りの暗がりからコンコンと石畳を杖で突く音が微かにしていた。段々と近づいてくる、音の正体は白い正装を身に纏った髪の長いエルフの女性だった。両足がガクガクと震えている。
女性「ハァ・・・、ハァ・・・、すみ・・・、ません・・・。1杯で・・・、構いませんので・・・、水を・・・。」
光「とにかく座ってもらおう。」
ラリー「この方は・・・、まさか・・・、少々お待ちを!」
ラリー女性の正装を見て驚きグラスに並々と注いだ水を女性に飲ませた。この世界で布教されている『神教』で数人しかいないと言われる『アーク・ビショップ』と呼ばれるうちの1人、メイスだった。メイスは隣のバルファイ王国からこの国の王宮の横にある教会を目指して1人歩いていたのだが食料が底を尽き空腹で死にかけていたのだ。
水を飲んだメイスは正しく水を得た魚の様に復活し、1息ついて感謝を述べた。
メイス「ふぅ・・・、助かりました。ここまで歩いて来る折、ある程度の食料は持っていたのですが少しずつ食べていたのにも関わらず無くなってしまった上に財布を隣国の教会に忘れてきたらしく、命からがらこちらまで歩いて来た次第でして。とても良い匂いがして来たので近づいてしまったのです・・・、哀れな私をお許し下さい。」
ラリー「アーク・ビショップ様・・・、ただの呑み会なので大した物はございませんがこちらでご一緒にいかがですか?」
メイス「宜しいのですか、何とお優しい・・・。皆様に神のご加護があらん事を。」
メイスは祈りを捧げ感謝するように差し出された焼き鳥やピザを食べ始めた。
因みにだが『神教』には個人の自由を尊重するという考えがあり、また『タダより高い物は無い、貰える物は全て貰え』を基本としているらしい。それが故に・・・。
メイス「お願いですからぁ~、アーク・ビショップなんて堅い呼び方せずに気軽にメイスって呼んで下さいよぉ~。」
基本に忠実に行動した結果、勧められるがままに差し出された酒を呑みつくし泥酔してしまった。因みに食事の制限も無いので肉食も酒も大丈夫なのだ。
メイスと光はすぐに意気投合して互いに日本酒をお酌しあう仲にまで至っていた、どう見ても聖職者には見えない。
メイス「何ぃ?違う世界で熱中症で死んで知らない間にこの世界に転生してきたってぇ?そんな話聞いた事ないわ