-㊶ 夜勤の制服と竜-
2人は中庭に入ると月夜に照らされた王宮を眺めながら石畳を歩いていた、好美に紳士的な印象を持たせるためか、ニコフはさり気なく歩幅を好美に合わせていた。
ニコフ「先程は私の部下が驚かせて、申し訳ございませんでした。後できつく叱っておきますので。」
好美「いえいえ、少し驚きましたがお気になさらないで下さい。」
ニコフ「良かった、それを聞いて安心しました。」
ニコフの案内で「夜間見回り係々員通用口」へと向かい、教えられたパスワードをドア横の機械に入力し、開錠音を確認して中へと入った。6畳位の空間が広がり、真ん中にはテーブルと椅子が置かれている。奥には大小2つの扉があり、ニコフは小さい方の扉を指差した。
ニコフ「ここは夜間見回り係用の控室です、あちらの小さい方の扉がロッカールームとなっていますので手荷物はあちらにお願いします。ただ私にも何があるか分かりませんのでご貴重品は必ず身につけておいてください。それと・・・、この紙袋に制服が入っていますのでそれに着替えてからまたこちらにお戻りください・・・、と言ってもあれですね。」
手渡された紙袋を抱えて小さな扉へと向かう、中には鍵付きのロッカーが並んでいて名札と思われる木の板に「倉下好美」と名前が刻まれた物を見つけ早速手荷物を入れると紙袋の中身を確認した。
好美「これ・・・。」
渋々中に入った制服に着替えて先程の控室に出ると、もう既に同じ制服を着たニコフが待ち構えていた。
好美は違和感たっぷりの制服について確認する事にした。
好美「ニコフさん・・・、これつなぎですよね?本当にこれが制服なんですか?」
先程まで好美が着ていた物とさほど変わらないつなぎ、それが故に王宮の制服としては合ってないのではないかと疑問を抱いていた。ただニコフ曰く、理由はとてもシンプルだった。
ただ、好美個人は制服がつなぎで安心していた。
ニコフ「私も人づてに聞いたのですが、王様が動きやすさ重視での制服を探されていた矢先にちょうど好美さんの衣服をご覧になってこれになさったそうですよ、お気づきになりませんでしたか?」
好美「い・・・、いえ・・・。私国王様になんて会っていません!!」
それもそうだ、今思えば国王であるエラノダは私服で好美の面接を行っていたので気付かないのも無理は無い。
そういった会話を交わしていると、通用口の外