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Home / 恋愛 / 社長夫人はずっと離婚を考えていた / 第231話

第231話

Author: 雲間探
玲奈は穏やかな表情を崩さなかった。

いつものことだった。

智昭の記憶力なら、これくらい覚えていても別に不思議じゃない。

今回智昭がこうして準備してくれたのも、藤田おばあさんのお見舞いに来たことへの感謝の気持ち程度だろう。

それ以上の意味はない。

食事を終えた後、玲奈と青木おばあさんはさらに一時間ほど病室で過ごし、そろそろ帰る準備を始めた。

もう遅い時間だったため、藤田おばあさんも無理には引き止めず、智昭に向かって声をかけた。「あなたと茜ちゃんも早めに帰りなさい」

「そうする」智昭が応えた。「明日の朝また来るよ」

玲奈と智昭たち四人は一緒に病室を出た。

エレベーターに乗り込むと、智昭が尋ねた。「自分で車を運転してきたのか」

玲奈は「うん」とだけ返した。

それ以上、智昭は何も言わなかったが、茜が思い出したように慌てて玲奈に聞いた。「ねえママ、今日の夜も帰ってこないの?」

玲奈が言った。「うん。ママはおばあちゃんを送って、そのまま泊まるつもりだから今日は帰らないよ」

「じゃあ私もおばあちゃんの家に泊まりたい!」

茜は今では智昭の方に懐いていることが多かったが、それでも青木おばあさんにとっては、彼女は紛れもなく玲奈の娘だった。

茜が青木家に行きたいと言ったその瞬間、玲奈が何か言う前に、青木おばあさんは優しく微笑んで「いいわよ、いいわよ」と返した。

青木おばあさんにそう言われてしまっては、玲奈も否定できなかったが……

彼女はやんわりと注意した。「でも、おばあちゃんの家にはあなたの着替えがないよ」

以前、茜が智昭のもとに行く前は、よく彼女と一緒に青木家に戻っていた。その頃は青木家での部屋のクローゼットの半分が、彼女と彼女の叔母によって用意された茜の服で埋まっていた。

けれどここ2年、茜が青木家に来ることが減り、成長も早かったせいで、以前のように定期的に新しい服を揃えることはしなくなった。

だから今は、青木家に彼女が着られる服はもう残っていなかった。

「えぇ?」茜はがっかりした様子を見せた。「じゃあ――」

そのとき、智昭が口を開いた。「後で服を届けるように連絡しておくよ」

玲奈は一瞬だけ黙り込んだが、特に何も言わなかった。

茜は大喜びで言った。「やったー。今日はママと一緒に寝れる!」

病院を出ると、茜は笑顔いっぱいで玲奈の車に乗り
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