翌日。
昼近くになって、玲奈は外出した。
有美ともしばらく会っていなかったが、有美は本当に彼女に会いたがっていた。
店に入り、個室に着くと、有美は彼女を見つけてすぐに駆け寄ってきた。「玲奈お姉さん!」
玲奈は笑いながら手を伸ばして彼女を抱きしめた。「有美ちゃん、久しぶりだね」
この店に玲奈が来るのは初めてだった。
食事中、彼女はこの店のどの料理も美味しく、自分の口に合っていると感じた。
辰也が1時過ぎの映画のチケットを予約しており、食事を終えると、彼らは映画館に入りチケットを受け取った。
チケットを切って入場する前、有美がポップコーンを食べたいと言い出し、辰也は買う前に尋ねた。「大きいの?小さいの?」
「大きいの!おじさんと有美のお姉さんと一緒に食べるの!」
辰也は笑って「わかった」と言った。
シアターに入ると、有美は真ん中の席に座った。
席に落ち着くと、有美はポップコーンを膝に抱え、自分で一粒食べたあと、すぐに玲奈にも食べるように促した。
玲奈は手を伸ばして一粒取り、口に入れた。
玲奈のあと、有美は辰也にも早く食べてと催促した。
有美の好みに合わせて、辰也が選んだのは、公開されたばかりの子供向けアニメ映画だった。
アニメとはいえ、物語は生き生きとして面白く、笑いあり涙ありで、玲奈も観ながらけっこう楽しんでいた。
三人はポップコーンをつまみながら映画を観続けた。
どれくらい時間が経ったのか、玲奈がポップコーンを取ろうと手を伸ばし、それを引こうとした瞬間、辰也の手がちょうど伸びてきて、彼の大きな手が彼女の手の上に重なり、そのまま包み込んだ。
玲奈は一瞬、動きを止めた。
辰也も同じだった。
でも、玲奈にとってはただの偶然、たまたま手が触れただけで、たいしたことではなかった。
彼女がそう思った瞬間、辰也も手を引き、「悪い」と言った。
「気にしてないよ」
有美は映画に夢中で、二人の間で起きたことにはまったく気づいていなかった。
玲奈は有美の膝の上にあるポップコーンがあまり残っていないのを見て、もう手を伸ばすのをやめた。
その様子を辰也は見ていた。
けれど、彼は彼女が自分を避けているのだと勘違いした。
彼は目を伏せ、それ以上ポップコーンに手を伸ばすことはなかった。
映画を観ている途中、有美がジュースを飲みすぎてトイレに