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Home / 恋愛 / 社長夫人はずっと離婚を考えていた / 第350話

第350話

Author: 雲間探
出張だったのか。

優里はそう思いながらいると、翔太が淡々とした声で言った。「他に用は?」

優里は首を振り、それから尋ねた。「長墨ソフトで働き始めてから結構経ったけど、ちゃんと馴染めてる?」

「問題なくやってるよ」翔太はそう答え、続けて言った。「用がないなら、先に上がるね」

そう言い終えると、翔太はそのまま背を向けて歩き出した。

一度も振り返らずに去っていく背中を見ながら、優里はわずかに眉をひそめた。

以前、彼の居場所を家族に漏らしたことに腹を立てた翔太は、それ以来、彼女からの電話を何度も無視し続けていた。

今日こうして会って、彼が話しかけに応じてくれたから、もう怒りはおさまったのかと思っていた。

けれど、その態度は以前よりもずっと冷たかった。

彼女は苦笑した。まだ完全には怒りが収まってないのかもね……

そんなことを思っていた矢先、見知らぬ番号から電話がかかってきた。相手は長墨ソフトの弁護士だと名乗り、礼二からの依頼で契約解除について話したいという内容だった。

優里の表情が沈んだ。

礼二は彼女の電話には出ず、代わりに弁護士を通して契約解除の話をしてくる。つまりもう、事態を覆す余地はほとんど残されていないということだ。

そう悟った優里は、くるりと踵を返してロビーを出た。

優里が去って間もなく、辰也も長墨ソフトに到着した。

彼が長墨ソフトに来たのは、業務上の打ち合わせのためだった。

玲奈は彼の到着を知ると、オフィスを出て応接室へと向かった。

ちょうど彼女がオフィスを出た直後、翔太が彼女を訪ねてきた。部屋にいないことを知り、社員に尋ねたところ、彼女が応接室で取引先と打ち合わせをしていると聞かされた。

最初は普通の取引相手かと思っていたが、相手が辰也だと知った瞬間、翔太は一瞬足を止め、二秒ほどしてから応接室へと歩き出した。

玲奈と辰也が仕事の話をしていたとき、ノックの音が響いた。玲奈は浅井が何か用かと思ったが、応接室のドアが開かれ、入ってきたのは翔太だった。それを見て、彼女は一瞬驚き、口にした。「秋山?どうして——」

「ちょっと話したいことがあって」玲奈に向かってそう言いながらも、翔太の視線は辰也に向けられていた。

「今は手が離せないから、あとにして」

玲奈と辰也の間に距離があり、他にも人がいたのを確認して、翔太はうなずいた。「わか
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