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Home / 恋愛 / 社長夫人はずっと離婚を考えていた / 第351話

第351話

Author: 雲間探
辰也は我に返り、彼女を見てふっと笑って首を振った。「いや、なんでもない」

辰也との打ち合わせを終えた午後、礼二から電話がかかってきた。

礼二が言った。「さっき弁護士から連絡があった。大森優里はやっぱり契約解除には応じなかった。ただ、その代わりにかなり高額な名誉毀損の賠償金を提示してきた。だけど俺は受けなかった。交渉が決裂した以上、もう法的手続きに入るように弁護士に指示した」

「うん、わかった」

その話を終えた後、礼二は続けた。「明日、藤田智昭がうちに来て商談をする。前半の交渉は酒見茂人に任せて構わないけど、確認が必要な書類が一件ある。それだけは君に直接見てもらいたいから……」

つまり、明日彼女は智昭と顔を合わせることになるということだ。

その意味を察した玲奈は、静かに返した。「わかった」

翌日、智昭と和真は午後に会社へやって来た。

礼二の言った通り、最初は茂人が智昭を対応していたが、途中で玲奈に連絡が入り、彼女は会議室へ向かった。

おそらく、茂人があらかじめ智昭に契約内容の確認とサインは礼二の代わりに彼女が行うと伝えていたのだろう。

彼女がドアを開けて入ってきても、智昭も和真も特に驚いた様子はなかった。

会議室に入ると、彼女は事務的に挨拶した。「こんにちは、藤田さん」

智昭は彼女と軽く握手を交わすと、そのまま席に着き、特に余計なことは言わなかった。

玲奈は書類を確認しながら、契約のいくつかの条項について彼と再確認を取った。問題がないと判断すると、その場でサインし、彼に告げた。「良いお取引になりますように」

「こちらこそ、よろしく」

自身の担当分が終わったことを確認し、玲奈は席を立ちながら茂人に向かって言った。「酒見さん、他にも仕事があるので、藤田さんの対応をお願いね」

そう言って立ち上がったところで、智昭が腕時計をちらりと見て、彼女を見上げながら声をかけた。「今夜、食事でもどう?」

玲奈が返事をする前に、智昭は続けた。「あとで茜ちゃんも連れてくるつもりだから」

最初、茂人は智昭が今回の契約成立を祝って玲奈を食事に誘ったのだと思っていた。

だが、智昭の次の言葉を聞いた瞬間、彼は思わず固まった。智昭と玲奈が話すときのその口調が、あまりにも親しげで自然すぎて、まるで昔からの知り合いのようだったからだ。

それに……

茜って誰だ?

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