今度は、見物好きな親戚たちが大興奮していた。
白井雅絵が考えついたことは、彼らも当然考える。その様子に、次々と興奮し、まるで無数の財宝が自分たちに向かって手を招いているかのように、拳を振るい始めた。
若江和嘉は経営の才能が全くない。もし若江グループの経営権を彼に持たせれば、彼らに好きに操られてしまうだけだ。
「そうだ、そうだ!」と、一人の親戚が声を上げ、拍手を送った。
「今すぐ公証役場に連絡を取る!」と、別の親戚が携帯を取り出して電話をかけ始めた。
親戚たちは一気に騒がしくなり、まるで祝賀会の準備をしているかのようだ。
その騒がしい様子を見ながら、姑が心配そうに私を制止した。
「雨音、財産の譲渡をもう一度考え直したほうが?」
私は微笑みながら首を横に振り、彼女を安心させた。
「大丈夫、お義母さん。私には分別がありますから」
姑も私の冷静さを知っている。慌てず騒がずの私を見て、もう彼女も何も言わなくなった。
親戚たちの「お手伝い」によって、私と若江和嘉名義の財産は、生活費の一百万円を除いてすべて詩織名義に移された。
公証人のオフィスでは、若江和嘉と白井雅絵が慈しむように詩織を見つめていた。
彼らは将来、若江グループを引っ張っていく姿を想像し、満面の笑顔を浮かべている。
その姿を見て、私は心の中で嗤い、同時に億万長者となった娘を見つめて笑った。
しかし、若江和嘉が大金を失っただけでは十分ではない。
白井雅絵からも奪い取る。
「白井雅絵、あなたは詩織を愛していると言っていたよね?愛の表明をしてみたら?」
私は何気ない口調で話しながら、白井雅絵の精巧に仕上げられた偽りの素顔に目を向けた。
「私が二十年以上、詩織を育てるためにいくら使ったか分かる?数億円だよ。
補償なんて要らない。あなたが詩織にお金を渡せばいいだけ。だって、私は彼女を一番愛しているから」
詩織が横から口を挟んだ。
「白井おばさん、父さんとあなたは二十年以上の付き合いがあるんですよね。数億円くらいはあるでしょう?ちょうど公証役場のところに来ているんだし、あなたもここで私に忠誠を示すべきじゃないですか?そうしないと、私はあなたが私を愛しているのか疑ってしまいます。血縁関係を確認するのは若江家のためだけじゃないかとね」
白井雅絵の顔が少し青白くなり、苦しい選択に陥った。