晴樹はどこからか車を手に入れたらしく、葉月が出勤すれば会社の外で待ち伏せ、帰宅すればアパートの前に車を停めて一夜を明かしていた。
朝昼晩の三食は、彼自身が準備して人に届けさせ、受け取る頃にはまだ温かいよう、時間まで計算していた。
かつて葉月が好きだったお菓子も、彼は苦労して日本から取り寄せ、そっと彼女のドア前に置いていた。
だが、すべて無駄だった。葉月はそれらを、すべて彼の目の前で通行人にあげてしまったのだ。
たった一週間で、晴樹は目に見えてやつれた。頬はこけ、目の下に濃いクマができ、表情は沈み込んでいる。
たまに視線が交差すると、晴樹の目は赤く潤み、そこには必死の懇願が込められていた。
だが葉月はすぐに視線を逸らし、まるで赤の他人を見るような目つきを崩さなかった。
もう彼と、何の関わりも持ちたくなかった。それに、彼のせいで、茂人に嫌な思いをさせることもしたくなかった。
初雪が降り、気温が一気に下がる。
寒がりな葉月のため、茂人は早めに暖房を入れていた。一方、外にいる晴樹は、車のエアコンだけで凍える寒さに耐えていた。
その夜、葉月はまた、フレンド申請の通知を受け取った。
【葉月、この数日、ずっと昔のことを考えてた。本当に、俺が間違ってた。やり直さないか?】
【外はすごく寒い。もう限界かもしれない。お願いだ、無視しないでくれ】
葉月は、茂人が淹れた茶を手に取り、視線を落としたまま窓の外を見つめる。
庭には、一台の車がぽつんと停まっていた。雪に包まれて、ひときわ寂しく見えた。
「もう氷点下だよ。車の暖房じゃ、耐えきれないだろうな」
茂人が葉月の隣に来て言う。
「俺の部屋、貸してあげようか?」
葉月は顔を上げる。「そんなに寛大なの?」
「だって、彼が倒れたら、君が自分を責めるだろ?」茂人は肩をすくめて笑った。
「いいの。大丈夫」葉月はゆっくりと茶を口に含む。体の芯から、ぽかぽかと温まるようだった。
「寧音って人のことを疑い始めた時、私は自分に言い聞かせたの。
『葉月、相手があなたを愛してくれなくても、あなたは自分を愛さなきゃダメ。前に進めない道だとわかってるなら、引き返す勇気を持ちなさい』って。今も、それとまったく同じ」
葉月は、そっとカーテンを引いた。もう、あの車を見ることもなかった。
「自分の身すら大切にできない人に、ど